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実際の治療例 “慢性的に下痢が続く(過敏性腸症候群)”

[2024.11.25]

当院や本院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

30代男性 慢性的に下痢が続く 

【症状】

大学卒業後社会人になってから下痢気味になり、数年前から悪化し1日5-6回の下痢があり会社でも度々トイレに行かなくてはならず、またここ最近は下腹部の痛みも出てきたとことで来院されました。

 

【検査】

経過が慢性的であり、ご本人も大腸がんなどの病気が心配とのことであり、腹部エコーや大腸内視鏡(大腸カメラ)血液検査で病気が潜んでいないかを確認しました。

過敏性腸症候群の内視鏡所見

 

結果はいずれも特に問題なく、下痢型の過敏性腸症候群と診断しました。

 

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【治療】

仕事によるストレスはあるものの環境を変えることは難しいので、過敏性腸症候群の症状をコントロールし上手く付き合っていくため以下の治療を行いました。

 

①食生活の改善

・減酒

アルコールには便を緩くしてしまう作用があります。この方はお酒をほぼ毎日飲まれていたので、休肝日をしっかりつくり、翌日仕事のない週末に飲むようにしていただきました。

 

②内服治療

・セロトニン3受容体拮抗薬(イリボー)

下痢型の過敏性腸症候群の方にはかなり効いてくれるお薬です。

ただ量によってはお腹の張りなどの副作用が出てしまったり、やめると症状が再燃することが多いため、過敏性腸症候群の体質を変えていくような整腸剤と漢方薬を併用しました。

 

・整腸剤

腸内細菌のバランスを整えることで、便通や知覚過敏の改善が期待できます。

 

・漢方薬

腹痛に対しての処方です。腸の過蠕動(動きすぎ)や知覚過敏に対して効果があり、知覚過敏などの体質も改善してくれる効果があります。

 

・抗不安薬

特に会議前や訪問先に向かう途中などプレッシャーがかかる場面では必ず下痢と腹痛をおこすとのこともあり、そのような場面では眠気の来ないような軽い抗不安薬を屯用することとしました。

 

【経過】

薬を飲み始めて2-3日で下痢は減り、腹痛も出にくくなりました。飲み始めて2週間目の再診時には「ほぼ下痢は落ち着いており、腹痛が時々出る」と言う状況でした。

さらに1か月程経過したころには症状がほとんど気にならないところまで改善されました。

 

その後は漢方をベースに処方を続け、現在は調子が悪くなったらセロトニン3受容体拮抗薬を数日飲んで落ち着けるプレッシャーがかかるときに抗不安薬を頓服して症状が出ないようにする、といったような具合で薬を減薬して症状とうまく付き合って頂いています。

 

薬を減らしても大丈夫になった理由としては、漢方や整腸剤による体質改善に加え、「下痢や腹痛になったらどうしよう」ということがストレスとなり、それがまた腸に影響するという悪循環に陥ってたため、痢・腹痛が落ち着いたことで不安要素が改善され、結果減薬していくことにつながったと考えられます。

 

文責:神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

 

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