歩くとズキンと響く腹痛の原因は大腸憩室炎?|50代男性の治療例
この記事でわかること
- 歩くと響く腹痛で考える主な原因
- 大腸憩室炎とはどのような病気か
- 大腸憩室炎の症状と危険なサイン
- 腹部エコーや血液検査で何がわかるか
- 50代男性に実際に行った診察・検査・治療
- どのタイミングで病院を受診した方がよいか
歩くとズキンと響く腹痛――それは大腸憩室炎かもしれません
歩くたびにズキンと響く腹痛があると、「少し様子を見れば治るかもしれない」と考えてしまう方は少なくありません。
しかし、歩行時の振動で痛みが響く腹痛、押すと強く痛む腹痛、発熱を伴う腹痛は、腸の炎症が進んでいるサインのことがあり、早めの受診が大切です。
なかでも左下腹部の痛みでは、大腸憩室炎が原因になっていることがあります。
今回は、前日から続く左下腹部痛が昼食後に一気に悪化し、歩くだけでもズキンと響くようになって受診された50代男性の実際の診療例をもとに、症状の経過、診察で何を疑ったのか、腹部エコーや血液検査でどのように診断したのか、外来での治療と改善までを専門医の東海林院長が詳しくご紹介いたします。
腹痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
歩くと響く腹痛・左下腹部痛がある方へ
池袋上田胃腸クリニックでは、腹痛の状態に応じて診察・血液検査・腹部エコーなどを組み合わせ、原因を確認しています。
痛みが強い、悪化している、発熱を伴う場合は我慢せずご相談ください。
歩くと響く腹痛を起こす主な原因
歩いたときの振動で痛みが響く場合、腹部の中で炎症や刺激が起きている可能性があります。
代表的な病気には次のようなものがあります。
- 大腸憩室炎:大腸の憩室に炎症が起こる
- 急性虫垂炎:特に右下腹部痛で重要
- 感染性腸炎:腹痛に下痢や発熱を伴いやすい
- 腹膜垂炎:限局した強い腹痛を起こす
- 尿管結石:側腹部から下腹部へ強い痛みが出ることがある
- 虚血性腸炎:突然の腹痛の後に下痢・血便を伴うことがある
- 大腸がんなどの大腸疾患:慢性的な腹痛や便通変化などを起こすことがある
「歩くと響く」という症状だけで大腸憩室炎と判断することはできません。
痛む場所、発症の仕方、発熱、下痢・血便などの随伴症状、診察所見を組み合わせて原因を絞り込むことが重要です。
歩くと響く腹痛や左下腹部痛は、大腸憩室炎以外にもさまざまな原因で起こります。
▶腹痛の原因を幅広く知りたい方は、[胃痛・腹痛外来]のページもご覧ください。
大腸憩室炎とは?
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側へ袋状に飛び出した状態です。
憩室があるだけでは症状がないことも多く、この状態を「大腸憩室症」といいます。
この憩室の周囲に炎症が起こしたものが大腸憩室炎です。
大腸憩室炎の発症には、腸管内圧、腸内環境、生活習慣、遺伝的要因など複数の因子が関係すると考えられており、単純に「憩室に便が詰まったことだけ」が原因とはいえません。[1][2]
主な症状は、
- 持続する腹痛
- 左下腹部または右下腹部の痛み
- 押したときの痛み
- 発熱
- 便秘・下痢などの便通変化
- 吐き気
などです。
日本人を含むアジア人では右側大腸の憩室炎も比較的多いため、必ずしも左下腹部だけが痛くなるわけではありません。[2]
炎症が強くなると、膿瘍、穿孔、腹膜炎、狭窄、瘻孔などを起こすことがあるため、重症化のサインを見逃さないことが重要です。[1][2]
▶大腸憩室炎の原因・症状・再発予防については、[大腸憩室症・憩室炎]のページでも詳しく解説しています。
実際の症例【50代男性|歩くとズキンと響く腹痛】
【症状】
前日の夕方頃から左下腹部に鈍痛を自覚。
一晩寝れば治るかと思っていましたが、朝になっても痛みは引かず、昼食後しばらくしてから一気に増悪。
歩くだけでも振動で痛みがズキンと響くようになってきたため夕方に当院を受診されました。
【診察】
触診では左下腹部を押すと強い痛みがあり、離すと痛みが周りに広がるような状態で腹膜炎を伴った強い炎症を疑いました。
左下腹部の痛みの原因としては、
- 憩室炎や感染性腸炎などの大腸炎
- 尿管結石
- 腹膜垂炎などの腹膜の炎症
などが考えられ、まずは腹部レントゲン・腹部エコーや血液検査を行い状態を評価することとしました。
【検査】
腹部エコーを行うと、左下の痛む場所に一致してS状結腸の憩室(黄色部分)と周囲の大腸の壁の肥厚(図:青部分)が描出されました。

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血液検査でも強い炎症反応が認められたことから、大腸憩室炎と診断しました。
今回のように、歩くと響く腹痛では腹部エコーが診断の助けになることがあります。
▶腹部エコーでわかる病気や検査の流れについては、[腹部エコー検査]のページで詳しくご案内しています。
【治療】
憩室炎は重症の場合は入院して様子を見ることもありますが、今回はご本人の希望もあり外来で治療を行うこととしました。
①抗生剤
外来にて抗生剤の点滴を行い、内服薬の抗生剤を飲んで頂きました。
②食事制限
腸管を安静にし憩室部分に便による圧がかからないように、食事は水分やスポーツドリンク、ゼリーなどの流動形のものの摂取にとどめてもらいました。
【経過】
翌日の再診では痛みはあるものの改善傾向で、血液検査での炎症反応もやや低下しており、このままの治療方針で憩室炎の改善が見込める状態と判断し、抗生剤の点滴・内服継続としました。
翌々時の再診時にはさらに痛みも炎症反応も改善し、食事は2-3日おかゆやうどんなどの柔らかいものを食べて頂くようにし、4日後に再診としたところみぞおちの痛みはなくなっており、血液検査・エコーの所見とも改善しており、憩室炎の治療は終了となりました。
今回の治療例からわかること
① 「歩くと響く腹痛」は炎症のサインになることがあります
歩行や体動による振動で痛みが強くなる場合、腸などの炎症によって腹膜が刺激されている可能性があります。
特に「じっとしていても痛い」「押すと痛い」「時間とともに強くなる」といった症状を伴う場合には注意が必要です。
② 左下腹部痛では大腸憩室炎も重要な鑑別です
大腸憩室炎では持続する局所的な腹痛が典型的です。
ただし、虫垂炎、腸炎、腹膜垂炎、尿管結石などでも似た症状が起こるため、症状だけで判断することはできません。
③ 腹痛では腹部エコーが診断の助けになることがあります
今回の症例では、腹部エコーで痛みの位置に一致したS状結腸の憩室と周囲の炎症所見を確認できました。
一方、重症化が疑われる場合や診断が不明瞭な場合にはCTなどが必要になるため、状態に応じて検査を選択することが重要です。[1][2]
受診の目安|歩くと響く腹痛を様子見しない方がよいケース
次のような場合は、自己判断で様子を見ず医療機関へ相談してください。
- 歩くとお腹にズキンと響く
- 腹痛が数時間以上続いている
- 時間とともに痛みが強くなっている
- お腹を押すと強く痛む
- 発熱・悪寒を伴う
- 吐き気・嘔吐がある
池袋で腹痛が続いている方へ
歩くと響く腹痛や、悪化する左下腹部痛には、大腸憩室炎をはじめ治療が必要な病気が隠れていることがあります。
池袋上田胃腸クリニックでは、症状に応じて診察・血液検査・腹部エコーなどを組み合わせて原因を確認します。
池袋駅から徒歩5分程度でアクセス可能ですので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
WEB予約はこちら 03-5953-5903東海林院長からのコメント
「歩くとお腹に響く」という症状は、患者さんから実際によく聞く表現です。
もちろん、その症状だけで憩室炎と決まるわけではありません。
ただ、歩いた振動でも痛いほど局所の痛みが強くなっている場合には、腸やその周囲に炎症が起きていることがあります。
今回の患者さんも、前日は鈍い痛みでしたが、その後急速に悪化し、歩くだけでも痛みが響くようになって受診されました。
腹痛では「どこが痛いか」だけでなく、いつ始まったか、どのように変化したか、動いたときにどうなるかも診断の大切な手がかりになります。
痛みが悪化しているときは、我慢しすぎずご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
大腸憩室炎についてよくある質問
Q1.歩くとお腹に響くと大腸憩室炎ですか?
必ずしも大腸憩室炎とは限りません。虫垂炎、感染性腸炎、腹膜垂炎、尿管結石などでも似た症状が出ることがあります。痛みが続く場合や悪化する場合は診察を受けてください。
Q2.大腸憩室炎はどこが痛くなりますか?
左下腹部に多いとされていますが、日本人を含むアジア人では右側大腸にも憩室が多いため、右下腹部が痛くなることもあります。
Q3.大腸憩室炎は自然に治りますか?
軽症で自然に改善するケースもありますが、症状だけでは重症度を判断できません。膿瘍や穿孔などへ進行することもあるため、強い痛みや発熱がある場合は医療機関で評価を受けてください。
Q4.大腸憩室炎では必ず抗生物質を飲みますか?
必ずではありません。現在は、全身状態が良好な軽症・非合併性憩室炎では抗菌薬を選択的に使用する考え方があります。一方、症状が強い方、基礎疾患がある方、免疫機能が低下している方、合併症が疑われる方などでは抗菌薬が必要になることがあります。
Q5.憩室炎になると入院が必要ですか?
軽症で全身状態が安定していれば外来治療が可能な場合があります。一方、強い炎症、膿瘍、穿孔、腹膜炎、腸閉塞、敗血症などが疑われる場合には入院治療が必要です。
Q6.憩室炎のときに大腸カメラを受けても大丈夫ですか?
急性期は炎症部分への負担を考え、通常は大腸カメラを急いで行いません。必要な場合は、炎症が十分に落ち着いてから検査時期を判断します。
Q7.大腸憩室炎を繰り返すと大腸がんになりますか?
憩室炎そのものが大腸がんへ変化する病気ではありません。ただし、大腸がんが憩室炎と似た画像や症状を示すことがあるため、経過や過去の大腸カメラ歴によっては炎症改善後に大腸カメラを検討します。
Q8.大腸憩室炎は再発しますか?
再発することがあります。再発リスクを下げるためには、炎症が治った後の食生活、適正体重、運動、禁煙など生活習慣を整えることが重要と考えられています。
Q9.憩室炎のときは何を食べればよいですか?
急性期は症状の程度によって一時的に食事内容を調整します。痛みが改善したら、医師の指示に合わせて水分や流動食から消化しやすい食事へ徐々に戻します。自己判断で長期間絶食することは避けてください。
Q10.血便が出た場合も憩室炎ですか?
大腸憩室から出血する「大腸憩室出血」もありますが、血便には大腸がん、ポリープ、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、痔など多くの原因があります。血便がある場合は原因を確認することが重要です。
まとめ|歩くと響く腹痛は我慢せず原因を確認しましょう
歩くとズキンと響く腹痛、押すと強く痛む腹痛、時間とともに悪化する腹痛では、大腸憩室炎をはじめ腹部に炎症が起きていることがあります。
今回の50代男性も、最初は軽い左下腹部痛でしたが、翌日には歩くだけでも痛みが響くまで悪化していました。
診察・腹部エコー・血液検査を組み合わせることでS状結腸憩室炎と診断し、状態に合わせて外来治療を行い改善しました。
「いつもの腹痛だから」「一晩寝れば治るだろう」と我慢せず、痛みが続く・強くなる・発熱を伴う場合には早めにご相談ください。
▶ WEB予約/▶ 電話相談:03-5953-5903
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東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、池袋上田胃腸クリニックまでお気軽にご相談ください。
アクセス
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診療は完全予約制です。
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▶WEB予約は【こちら】
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
- 日本消化管学会 編.大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026(改訂第2版).南江堂,2026.
- National Institute for Health and Care Excellence. Diverticular disease: diagnosis and management. NICE guideline NG147.
- Peery AF, Shaukat A, Strate LL. AGA Clinical Practice Update on Medical Management of Colonic Diverticulitis: Expert Review. Gastroenterology. 2021;160(3):906-911.e1.
- Strate LL, Morris AM. Epidemiology, Pathophysiology, and Treatment of Diverticulitis. Gastroenterology. 2019;156(5):1282-1298.e1.

