毎日下痢で仕事に支障…検査で異常なしでも腹痛が続く「下痢型IBS」の治療例
「毎日下痢が続いて、会議や外回りが怖い」
「検査では“異常なし”と言われたのに、腹痛が治らない」
──このタイプのご相談は外来でとても多く、背景にある代表的な病気のひとつが 過敏性腸症候群(IBS) です。
IBSは命に関わる病気ではない一方で、仕事・通学・外出の自由を奪い、生活の質を大きく下げることがあります【1】【2】。
今回は、当院を受診された 30代男性の実例 をもとに、
「なぜ検査で異常がないのに症状が続くのか」
「どうやって“危ない病気”を除外し、治療を組み立てるのか」
を、消化器専門医の東海林院長がわかりやすくお伝えします。
下痢や腹痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
この記事でわかること
- 毎日下痢が続くときに考える主な原因
- 過敏性腸症候群(IBS)とはどのような病気か
- 検査で異常なしでも腹痛や下痢が続く理由
- 大腸がん・大腸炎などを見逃さないための検査
- 下痢型IBSの治療方針
- 早めに受診した方がよい症状
下痢や腹痛が続く方へ
池袋上田胃腸クリニックでは、下痢・腹痛・便通異常などの胃腸症状について、診察、血液検査、腹部エコー、大腸カメラなどを組み合わせて原因を確認しています。
「検査で異常なしと言われたけれどつらい」「仕事に支障が出ている」「大腸の病気が心配」という方は、お気軽にご相談ください。
▶ WEB予約/▶ お電話:03-5953-5903
下痢と腹痛を起こす主な原因
下痢や腹痛が続く原因は、過敏性腸症候群だけではありません。症状の期間、便の性状、血便の有無、体重減少、発熱、服用中の薬、食事、ストレス、家族歴などを確認しながら、原因を絞り込みます。
| 原因 | 特徴 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 過敏性腸症候群(IBS) | 腹痛と下痢・便秘などの便通異常が続く | 排便で楽になる、緊張や外出前に悪化する、検査で大きな異常がない |
| 感染性腸炎 | 急な下痢、腹痛、発熱、吐き気 | 生もの、旅行、周囲の流行、発熱、血便 |
| 炎症性腸疾患 | 潰瘍性大腸炎・クローン病など | 血便、粘液便、発熱、体重減少、貧血 |
| 大腸がん・大腸ポリープ | 便通異常、血便、便が細い、お腹の張り | 40歳以上、便潜血陽性、家族歴、体重減少 |
| 薬剤性下痢 | 薬の開始後から下痢が続く | 抗菌薬、糖尿病薬、制酸薬、サプリメントなど |
| 食事・体質 | 乳糖不耐症、脂質、アルコール、カフェインなど | 特定の食品や飲酒で悪化するか |
| 甲状腺機能異常など | 全身の代謝が関係する下痢 | 動悸、体重減少、汗が多い、手の震えなど |
特に、血便、体重減少、貧血、発熱、夜間に目が覚める下痢、便潜血陽性、大腸がんの家族歴がある場合は、IBSと決めつけずに大腸カメラなどで確認することが大切です【3】。
関連ページ:なぜ下痢が起こるのか?原因と治療法を専門医が解説
過敏性腸症候群(IBS)とは?
今回の症例で最終的に考えたのは、下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)です。
IBSは、内視鏡検査や血液検査などで明らかな炎症・腫瘍などが見つからないにもかかわらず、腹痛と便通異常が続く病気です。
IBSは「ストレスだけの病気」ではありません。実際には、次のような要素が重なり、腸が敏感な状態になると考えられています【1】【4】。
- 脳腸相関の乱れ:緊張・不安・ストレスで腸が反応しやすくなる
- 内臓知覚過敏:腸の動きやガスを痛みとして感じやすい
- 腸の動きの乱れ:下痢、便秘、腹痛につながる
- 腸内細菌や発酵の影響:ガス、腹鳴、お腹の張りに関係する
- 感染後IBS:胃腸炎のあとに症状が長引くことがある【5】
症例|30代男性「下痢と腹痛が治らない」
症状
大学卒業後に社会人となってから下痢傾向が続き、数年前から悪化。1日5〜6回の下痢があり、会社でも何度もトイレに立つ必要がありました。さらに最近は 下腹部痛 も加わり、「大腸がんなどではないか」と不安が強くなって受診されました。
診察
下痢や腹痛が続く場合には次のような病気の可能性を考えます【1】【3】。
- 過敏性腸症候群
-
大腸がん・大腸ポリープ(便通異常、腹痛、体重減少など)
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炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)(血便、発熱、炎症所見など)
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感染性腸炎/寄生虫(旅行・生もの・周囲の流行)
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薬剤性下痢(抗菌薬、糖尿病薬、制酸薬など)
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乳糖不耐症などの食事関連
-
甲状腺機能異常 など全身疾患
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(年齢や状況により)胆汁酸性下痢、顕微鏡的大腸炎 など
正しく状態を把握し、治療方針を立てるため血液検査・腹部エコー・大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。
当院で行った検査
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血液検査:貧血・炎症・栄養状態などを評価➡異常なし
-
腹部エコー:胆のう、膵臓、腸管周囲の炎症のチェック➡異常なし
-
大腸内視鏡(大腸カメラ):腫瘍・炎症性腸疾患などを除外➡異常なし
いずれも大きな異常所見はなく、総合的に 下痢型の過敏性腸症候群(IBS-D) と診断しました【1】【2】。
実際の内視鏡画像
大腸内視鏡では異常なく綺麗な状態でした。
💡当院では最短当日に大腸内視鏡(大腸カメラ)がお受け頂けますので、お気軽にお問い合わせください。
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▶ WEB予約/▶ 電話相談:03-5953-5903
- 関連ページ:無痛大腸カメラ|実際の検査の流れや鎮静剤とオリジナル低痛挿入による無痛大腸カメラの詳細がご確認いただけます
※来院時間や当日の状況によっては翌日以降の検査となる場合もあります
治療
IBSは「原因をゼロにする」よりも、トリガーを減らす+腸の過敏を落ち着かせる+再燃時の作戦を持つことで、生活の質を取り戻す治療が現実的です【1】【3】。
本例では、仕事のストレス自体を消すのは難しいため、次の3本柱で治療しました。
① 生活習慣:減酒で腸への刺激を減らす
アルコールは腸の動きや分泌に影響し、下痢を悪化させることがあります。ほぼ毎日飲酒されていたため、翌日が休みの週末中心へ調整していただきました。
② 薬物療法:イリボー+整腸剤+漢方
・5-HT3受容体拮抗薬(イリボー)
下痢型IBSに対して、5-HT3拮抗薬(ラモセトロン)は有効性が報告されています【7】。ただし体質や量によって、張りなどが出ることもあるため、“単独で長期依存”にならない設計が重要です。
・整腸剤
腸内環境を整えることで、便通や過敏性の改善が期待できます【1】。
・漢方薬(腹痛・過蠕動・知覚過敏を意識)
腹痛が前に出る方では、腸の動きすぎや知覚過敏を落ち着かせる目的で漢方を組み合わせます【1】。
・抗不安薬
「会議前」「訪問先への移動中」など、プレッシャー場面で必ず症状が出るとのこと。
眠気が出にくい薬を 必要時のみ頓用とし、「不安→症状」の連鎖を断つ設計にしました【1】。
③ 体質改善とトリガー回避:再発予防の“両輪”
IBSは良くなったり悪くなったりを繰り返しやすい病気です。
そのため当院では、
-
普段:整腸剤+漢方で土台を作る
-
悪化時:イリボーを短期追加
-
場面不安:頓用で先回り のように、再燃時の作戦を先に決める形をよく取ります【1】【3】。
経過
-
2〜3日:下痢回数が減少、腹痛も軽減
-
2週間:「下痢はほぼ落ち着き、腹痛は時々」
-
1か月:ほとんど気にならないレベルへ
以後は、漢方・整腸剤をベースに、悪化時のみ短期追加でコントロールできています。
受診の目安|下痢や腹痛を様子見しない方がよいケース
次のような場合は、IBSと思い込まず、早めに消化器内科を受診してください。
- 下痢や腹痛が2週間以上続く
- 仕事・学校・外出に支障が出ている
- 血便や粘液便がある
- 便潜血陽性を指摘された
- 体重が減っている
- 貧血を指摘された
- 発熱を伴う
- 夜中に下痢や腹痛で目が覚める
- 40歳以上で急に便通が変わった
- 大腸がんや炎症性腸疾患の家族歴がある
- 市販薬や整腸剤で改善しない
特に、血便、便潜血陽性、体重減少、貧血、夜間症状は、IBS以外の病気を確認する重要なサインです。
関連ページ:大腸がんの症状とは?血便・便が細い・お腹の張り・便潜血陽性
池袋で下痢・腹痛・IBSの相談をご希望の方へ
池袋上田胃腸クリニックは、池袋駅から徒歩5分程度の消化器内科・胃腸内科です。下痢、腹痛、便通異常、過敏性腸症候群、大腸カメラのご相談に対応しています。
「検査で異常なしと言われたけれどつらい」「毎日の下痢で仕事に集中できない」「大腸の病気が心配」という方は、我慢せずにご相談ください。
院長コメント|検査で異常なしでも「つらい症状」は治療対象です
IBSの方は、「検査で異常がないなら気のせいですか?」と不安になることがあります。しかし、IBSは気のせいではありません。
大腸に大きな炎症や腫瘍がない一方で、腸が過敏に反応し、腹痛や下痢として症状が出ている状態です。特に下痢型IBSでは、症状そのものだけでなく、「また下痢になるかもしれない」という不安が、さらに腸を刺激してしまうことがあります。
今回の方も、症状が落ち着くことで不安が軽くなり、不安が軽くなることでさらに腸が落ち着く、という良い循環に入ることができました。
大切なのは、まず大腸がんや大腸炎などの見逃してはいけない病気を確認し、そのうえで症状に合った治療を組み立てることです。
よくある質問FAQ
Q1. IBSは「ストレスだけ」が原因ですか?
A. ストレスは悪化因子の一つですが、それだけが原因ではありません。脳腸相関(自律神経の影響)、内臓知覚過敏、腸内環境、感染後(胃腸炎の後)など複数の要因が重なって起こると考えられています【1】【4】【5】。
Q2. 胃腸炎のあとから下痢が治らないのですが、IBSになることはありますか?
A. はい。感染性腸炎の後にIBSが続く「感染後IBS」があり、感染後に約1割前後で起こると報告されています【5】。治りきっていない腸炎と誤解されることもあるため、適切な評価が大切です。
Q3. 検査で異常がないのに腹痛が強いのはなぜ?
A. IBSでは腸の動きやガス自体よりも、「痛みの感じ方(知覚過敏)」が強くなっていることがあります【1】【4】。同じ刺激でも痛みとして脳に伝わりやすく、腹痛が続くことがあります。
Q4. IBSでも大腸カメラは必要ですか?
A. 年齢・症状・大腸がんの家族歴などで判断します。症状や不安が強い場合、他疾患の除外のため検査が役立つことがあります。
Q5. IBSだと思っていたら別の病気だった、はありますか?
A. あります。IBS様症状の方を精査すると、一定割合で器質的疾患(炎症や腫瘍など)が見つかった報告があります【6】。血便、体重減少、貧血、発熱、夜間症状などがある場合は早めの精査が必要です【3】。
Q6. 下痢型IBSに「イリボー」は効きますか?
A. 下痢型IBSに対する5-HT3拮抗薬(ラモセトロン)は、症状改善効果が報告されています【7】。ただし体質や用量で張りなどが出ることもあるため、整腸剤や生活調整と組み合わせて、無理なく続けられる設計が重要です【1】。
Q7. 食事は何に気をつければいいですか?
A. 個人差がありますが、低FODMAP食はエビデンスが比較的豊富な食事介入として位置づけられています【8】。ただし自己流で極端に制限すると続きません。まずは「悪化する食品・飲酒・食べ方(早食い等)」を記録して見える化するのが現実的です【1】。
Q8. 会議前など“特定の場面”で必ず下痢になります。対策は?
A. IBSは「症状への予期不安」が症状を強めることがあります【4】。頓用薬の活用、行動面の工夫(トイレ動線・開始前の時間確保など)、睡眠・カフェイン調整などを組み合わせ、再現性のある“作戦”を作ることが有効です【1】。
Q9. IBSは治らない病気ですか?
A. 完全にゼロにするのが難しい方もいますが、治療と生活調整で十分コントロール可能です【1】【3】。良くなった状態を維持するには、悪化時の追加治療を決めておくことが役立ちます。
Q10. どのタイミングで受診すべきですか?
A. 下痢や腹痛が2週間以上続く、仕事や日常生活に支障がある、市販薬で改善しない場合は一度ご相談ください。血便、体重減少、貧血、発熱、夜間症状などがある場合は早めの受診が安全です【3】。
まとめ
-
毎日下痢が続く/検査で異常なしでも腹痛が続く背景に、IBSが隠れていることがあります【1】【2】
-
IBSは症状が似る病気(大腸がん、炎症性腸疾患など)を除外することが重要です【3】【6】
-
薬・整腸剤・漢方・生活調整・不安対策を組み合わせると、仕事に支障が出るレベルでもコントロール可能です【1】【7】
💡当院は池袋駅から徒歩5分程度でアクセス可能です。
「下痢と腹痛が続く」「外出が怖い」「検査で異常なしと言われたけど辛い」方はお気軽にご相談ください。
📞 お電話でのお問い合わせ:03-5953-5903
関連ページ
参考文献
【1】日本消化器病学会.機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版).2020.
【2】Rome Foundation.Rome IV Criteria:Irritable Bowel Syndrome.
【3】Lacy BE, et al. ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2021.
【4】Ford AC, Lacy BE, Talley NJ. Irritable Bowel Syndrome. N Engl J Med. 2017.
【5】Barbara G, et al. Rome Foundation Working Team Report on Post-Infection Irritable Bowel Syndrome. Gastroenterology. 2019.
【6】Patel P, et al. Prevalence of organic disease at colonoscopy in patients with symptoms compatible with IBS. 2015.
【7】Matsueda K, et al. Ramosetron hydrochloride is effective for IBS-D. 2008.
【8】Chey WD, et al. AGA Clinical Practice Update on the Role of Diet in IBS. 2022.
医師紹介・アクセス・診療時間
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、池袋上田胃腸クリニックまでお気軽にご相談ください。
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文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
