実際の診療例【突然の激しい腹痛と血便…原因は虚血性腸炎|症状・検査・治療の流れ】
この記事でわかること
- 突然の腹痛・下痢・血便で考える主な病気
- 虚血性腸炎とはどのような病気か
- 虚血性腸炎と感染性腸炎などをどう見分けるのか
- 腹部エコー・血液検査・大腸カメラの役割
- 実際の50代女性の診断・治療経過
- すぐに受診した方がよい症状
「突然の激しい腹痛や血便に襲われたら?」
突然の激しい腹痛が起こり、そのあとに下痢、さらに血便が出ると、 「大腸がんではないか」「腸から大量に出血しているのではないか」と不安になる方も多いと思います。
このような症状を起こす病気のひとつが、虚血性腸炎です。 虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に低下することで大腸粘膜に炎症や出血が起こる病気で、 突然の腹痛→下痢→血便という経過をとることがあります。[1][2]
ただし、同じような症状は感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、大腸がんなどでも起こります。 症状だけで自己判断せず、必要な検査を組み合わせて原因を確認することが大切です。
本記事では突然の激しい腹痛・下痢・血便で来院された50代女性の実際の治療例をもとに、症状と関係する可能性のある疾患や、受診のタイミングについて、消化器専門医の東海林院長がわかりやすくお伝えします。
症状でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
池袋上田胃腸クリニックでは、診察、血液検査、腹部エコー、大腸カメラなどを症状に応じて組み合わせて、 腹痛・下痢・血便の原因を確認しています。
血便が出た、痛みが強い、症状が続いている場合は、無理に様子を見ずご相談ください。
突然の腹痛・下痢・血便を起こす主な原因
「腹痛・下痢・血便」という組み合わせでは、虚血性腸炎だけでなく複数の病気を考えます。
| 主な病気 | 症状の特徴 |
|---|---|
| 虚血性腸炎 | 突然の腹痛に続いて下痢・血便。左側の腹部痛が目立つことがあります。 |
| 感染性腸炎 | 下痢、腹痛、発熱、吐き気。食事内容や周囲の流行が参考になることがあります。 |
| 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患 | 血便や粘液便、下痢を繰り返すことがあります。 |
| 大腸憩室炎・憩室出血 | 局所的な腹痛、発熱、出血など。炎症と出血で症状が異なります。 |
| 大腸がん | 血便、便通変化、便が細い、体重減少など。無症状のこともあります。 |
特に「突然強く痛み、そのあと下痢や血便が出た」という時間経過は、虚血性腸炎を考える重要な手がかりです。 一方で、血便が出ている以上、症状が落ち着いても他の大腸疾患が隠れていないか確認することがあります。
▶ 血便の原因と検査について詳しくはこちら
▶ 下痢の原因について詳しくはこちら
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に不足し、大腸の粘膜に炎症・むくみ・出血などが起こる病気です。[1][2]
大腸の中でも、下行結腸からS状結腸など左側の大腸に起こることが多く、 典型的には突然の腹痛のあとに下痢や血便がみられます。
発症には、血管側の要因だけでなく、便秘などによる腸管内圧の上昇、脱水、血圧低下などが関係することがあります。 便秘のある方では虚血性腸炎のリスクが上昇したとの報告もあります。[3]
多くは一過性で保存的治療により改善しますが、まれに腸管壊死や腹膜炎を起こす重症例もあるため、 痛みの強さや全身状態を含めて重症度を判断することが重要です。[1][4]
実際の治療例|50代女性「突然の激しい腹痛・下痢・血便」
【症状】
前日の夕食後3時間ほどして、冷や汗を伴う強い腹痛が出現。
その後、水のような下痢が始まり、夜間に数回の下痢を繰り返した後、血便が出たため当院を受診されました。
【診察】
触診では左下腹部に強い圧痛を認め、症状と合わせて虚血性腸炎を疑いました。
その他考えらる疾患として
- 感染性胃腸
- 潰瘍性大腸炎
- 大腸憩室炎・憩室出血
があり、腹部エコーや血液検査を実施しました
【検査】
腹部エコーにて下行結腸からS状結腸にかけて特徴的な腸管の壁の肥厚を認め、虚血性腸炎と診断しました。

下行結腸の画像です。 水色矢印の範囲で腸管が浮腫み、粘膜下層が炎症で白く見えます (黄色矢印)
【治療・経過】
血液検査での炎症反応は軽微な上昇のみで、血便による貧血や大腸の炎症による腸閉塞などもないため、入院は必要なく、
- 食事制限
- 痛みや炎症に対しての内服薬
で外来治療としました。
その後、痛みは翌日にはかなり改善し食事制限を徐々に解除しましたが、虚血性腸炎の再燃なく、無事に治療完了となりました。
今回の治療例からわかること
①「腹痛→下痢→血便」の順番は重要な手がかりです
虚血性腸炎では、突然の腹痛が最初に起こり、その後に下痢や血便が続くことがあります。 症状が起こった順番は診断の重要な情報です。
② 血便は「食あたりだけ」と決めつけないことが大切です
感染性腸炎でも腹痛や下痢は起こりますが、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、大腸がんなどでも血便がみられます。 血便を伴う場合は、症状が軽くなってきても一度原因を確認することをおすすめします。
③ 腹部エコーが診断に役立つことがあります
腹部エコーは放射線被ばくがなく、その場で腸管壁のむくみや炎症範囲を確認できる検査です。 今回も下行結腸からS状結腸の腸管壁肥厚を確認でき、診断につながりました。
④ 症状が落ち着いたあとに大腸カメラを検討することがあります
虚血性腸炎が改善しても、血便の原因となる大腸がん、ポリープ、炎症性腸疾患などが隠れていないかを確認するため、 症状が落ち着いた段階で大腸カメラを検討することがあります。
受診の目安|突然の腹痛・下痢・血便を様子見しない方がよいケース
次のような場合は、自己判断で様子を見ず、消化器内科へ相談してください。
- 突然、強い腹痛が起こった
- 腹痛のあとに下痢・血便が出た
- 冷や汗が出るほど痛かった
- 左下腹部を押すと強く痛む
- 血便が繰り返し出る
- 水分がとれない
- めまい・ふらつき・動悸がある
- 痛みが時間とともに強くなっている
大量の出血、意識が遠のく、冷汗を伴う持続的な激痛、お腹が板のように硬いなどの症状がある場合は、 救急受診が必要になることがあります。
池袋で腹痛・下痢・血便にお困りの方へ
突然の腹痛や血便は、原因によって必要な検査や治療が異なります。 「少し良くなってきたから大丈夫」と判断せず、血便が出た場合や強い腹痛がある場合はご相談ください。
東海林院長からのコメント
突然の強い腹痛に加えて血便まで出ると、多くの患者さんが「大きな病気ではないか」と強い不安を感じます。
虚血性腸炎は、今回のように軽症であれば比較的短期間で改善することも多い病気です。 ただし、同じ腹痛・下痢・血便でも、感染症や炎症性腸疾患、大腸がんなど治療方針が異なる病気が隠れていることがあります。
大切なのは、病名を症状だけで決めつけるのではなく、 「どのように症状が始まったのか」「どこが痛むのか」「どのような血便なのか」を確認し、 必要な検査を組み合わせることです。
池袋上田胃腸クリニックでは、腹部エコーや内視鏡検査を含め、症状や状態に応じた検査をご提案しています。 腹痛や血便でお困りの方はご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問(FAQ)
Q1.虚血性腸炎ではどのような症状が出ますか?
A.突然の腹痛に続いて、下痢や血便が出ることが典型的です。左下腹部の痛みが目立つこともあります。ただし、全員に同じ症状がそろうわけではありません。
Q2.虚血性腸炎は食あたりとどう違いますか?
A.どちらも腹痛や下痢を起こしますが、虚血性腸炎では突然の強い腹痛のあとに血便が出ることがあります。感染性腸炎では発熱、嘔吐、食事歴などが手がかりになりますが、症状だけで完全に見分けることはできません。
Q3.虚血性腸炎は若い人でもなりますか?
A.高齢の方に多い病気ですが、若い方でも発症します。便秘、脱水、血圧低下などが関係することがあります。
Q4.虚血性腸炎はどのくらいで治りますか?
A.軽症では数日で腹痛や血便が改善してくることが多いですが、回復までの期間は炎症の程度によって異なります。症状が改善しない場合や悪化する場合は再評価が必要です。
Q5.虚血性腸炎は入院が必要ですか?
A.軽症で全身状態が安定していれば外来治療が可能なことがあります。一方、痛みが強い、脱水が強い、出血量が多い、腹膜炎を疑う所見がある場合などは入院や緊急治療が必要になることがあります。
Q6.虚血性腸炎では必ず大腸カメラを受けますか?
A.必ず急性期に行うわけではありません。症状、腹部エコー、CTなどで診断し、状態が落ち着いたあとに他の大腸疾患がないか確認する目的で大腸カメラを行うことがあります。
Q7.血便が止まったら受診しなくてもよいですか?
A.血便が止まっても原因が確認できていない場合は、一度消化器内科へ相談することをおすすめします。虚血性腸炎以外にも、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患などで血便が出ることがあります。
Q8.便秘は虚血性腸炎と関係がありますか?
A.関係することがあります。便秘によって腸の中の圧力が高くなり、腸への血流が低下することが発症に関係すると考えられています。便秘のある方では虚血性腸炎の発症リスクが高かったとの報告もあります。
Q9.虚血性腸炎は再発しますか?
A.再発することはあります。便秘や脱水など発症に関係する要因がある場合は、便通コントロールや水分摂取などを見直すことが再発予防につながります。
Q10.どのような血便なら救急受診が必要ですか?
A.大量の出血、強いめまいやふらつき、意識が遠のく感じ、持続する激しい腹痛、冷や汗、お腹が硬いなどを伴う場合は、通常の外来ではなく救急受診を検討してください。
まとめ
突然の強い腹痛のあとに下痢・血便が出た場合、原因のひとつとして虚血性腸炎が考えられます。
虚血性腸炎は軽症であれば比較的短期間で改善することが多い一方、 感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸憩室炎、大腸がんなどでも似た症状が起こるため、 症状だけで自己判断しないことが重要です。
今回の症例では、突然の腹痛・下痢・血便という経過、左下腹部の圧痛、 腹部エコーで下行結腸からS状結腸の壁肥厚を認めたことから虚血性腸炎と診断し、 軽症であったため外来治療で改善しました。
血便が出た、腹痛が強い、症状が繰り返す場合は、消化器内科へご相談ください。
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医師紹介・アクセス・診療時間
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、池袋上田胃腸クリニックまでお気軽にご相談ください。
アクセス
〒1710014
東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック(池袋駅 北口から徒歩5分)
- JR「池袋」北改札 → 左へ → 20b出口から地上へ
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- その先の十字路を越え、左手4軒目が当院です(迷ったら 03-5953-5903)
診療時間
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 8:30〜12:30 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 13:30〜17:00 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
休診日:金曜日午後・祝日
診療は完全予約制です。
▶お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
▶WEB予約は【こちら】
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
- Brandt LJ, Feuerstadt P, Longstreth GF, et al. ACG Clinical Guideline: Epidemiology, Risk Factors, Patterns of Presentation, Diagnosis, and Management of Colon Ischemia. Am J Gastroenterol. 2015;110:18-44. PMID:25559486.
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