実際の治療例 “非常にわかりづらい逆流性食道炎”
当院や本院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
30代 男性 起床時のえづき・吐き気
【症状】
3週間前くらいから起床時に胃の気持ち悪い感じやえづきや吐き気があり、近くのクリニックで胃カメラを受けましたが異常なしと診断され、吐き気止めの胃薬を出されて様子見となりました。
ただ、その後も症状の改善なく当院を受診されました。
【診察】
起床時の症状とのことで逆流性食道炎の可能性を考えました。
(※後述しますが、逆流性食道炎は食後だけでなく、明け方や起床時にも症状が起こりやすいのが特徴です。)
ご本人にもその旨を伝えたところ、もう一度胃カメラを行って状態を確認してほしいとの希望もあり、胃カメラの再検査を行うこととしました。
【胃カメラ】
胃カメラでは非常に分かりにくいのですが胃と食道のつなぎ目部分に炎症を認め、逆流性食道炎の診断としました。
炎症部分が視認しづらいため前医では見落とされていたと考えられます。

実際の内視鏡画像です。非常に分かりにくいのですが、胃と食道のつなぎ目に炎症(黄色部分)を認め、GradeAの逆流性食道炎と診断しました。

NBIモードに変えて観察すると、炎症部分と正常部分とのコントラストが上がりより視認しやすくなります。わかりにくい場合はこのようにモードを変えて観察することで正確な診断を行うことが可能になります。
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【治療】
逆流性食道炎は、胃酸の分泌過多や胃や食道の動きの低下により胃酸が胃から食道に逆流し、胃と食道のつなぎ目の部分に炎症が起きている状態です。
胸やけやげっぷや今回のように胃の気持ち悪い感じやえづきや吐き気など様々な症状を引き起こします。
特に胃酸の分泌が多くなる食後や夜間・就寝時に症状が起こりやすくなります。
胃カメラで診断をつけることが多いのですが、炎症の状態によっては今回のように見落とされてしまうこともあり、症状がある場合は専門施設での検査が望ましいと考えます。
逆流性食道炎の治療は
- 胃酸の分泌過多を抑える制酸薬
- 胃の動きを改善し胃酸の流れをよくする機能改善薬
- 逆流性食道炎を引き起こす生活習慣の改善
を軸に行っていきます。
前医では吐き気止めの胃薬が処方されていましたが、嘔気自体が逆流性食道炎による症状なので逆流性食道炎に適した制酸剤の胃薬への切り替えを行い、
併せて胃の動きを改善する漢方の処方を行いました。
胃薬はどれも同じわけではなく効果に差があるため、胃カメラで正確な診断をつけ、状態に合わせた適切な薬を選択することが重要です。
また、今回は逆流性食道炎を引き起こしやすい生活習慣として
- 毎日の飲酒
- 食べてから就寝までの時間が短い
がありました。
アルコール摂取をすると食道運動機能が低下してしまい食道の内圧が下がり、逆流し易くなり、
また食べてから寝るまでの時間が短いと就寝中に逆流が起こりやすくなります。
対応として
- 休肝日を作ること、寝酒をしないこと
- 食べてから就寝まではなるべく2時間以上あけること
などにも取り組んでいただきました。
【経過】
投薬開始後、4日ほどで起床時の症状が感じにくくなり、10日ほどで症状は消失し一旦薬は終了としました。
このように逆流性食道炎は、
- 正確に胃カメラで診断をつけること
- 適切な投薬を行うこと
が重要です。
症状でお悩みの方は当院へご相談ください!
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文責:神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)