実際の治療例 “胃痛が強くて食事がとれず体重が減ってきた”
当院や本院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
20代 女性 胃痛が強くて食事がとれず体重が減ってきた
【症状】
以前から何となく胃が痛くなることが多かったのですが、社会人になり環境が変わってから胃痛の頻度が増え、
最近は食事をとる度に胃痛が出て、あまり食事をとれず体重も減ってきたとのことで当院を受診されました。
【診察】
診察上は心窩部(みぞおちの辺り)を押すと痛みを感じ、食後に増強するとのことから胃潰瘍や胆石・膵炎、環境が変わったことを契機に症状が悪化したとのことから機能性ディスペプシアなどを鑑別として考えました。
【検査】
腹部エコーにて肝胆膵の状態を、胃内視鏡検査を行い胃の状態の検査を行いました。
腹部エコーでは、肝胆膵などの上腹部の臓器に痛みの原因となるような異常は認めませんでした。
また、胃カメラでも幸いなことに、胃の中に病変はなく、ピロリ菌もなく異常所見はない状態でした。
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・胃カメラ
【治療】
以上のように検査では特に疾患はなく、機能性ディスペプシアと診断しました。
機能性ディスペプシアとは、胃や周囲の臓器に病変がないにも関わらず、心因的ストレス・疲労などの身体的ストレスなどが原因となり胃酸分泌過多や胃の粘膜の知覚過敏を生じることで胃痛などの症状を引き起こす状態を指します。
治療として制酸剤・粘膜保護剤を飲んでいただきました。
<治療内容>
①制酸剤
胃酸分泌過多を抑えることで、胃痛が出ないようにします。
②胃粘膜保護剤
胃の粘膜を刺激から保護し、痛みを抑えます。
【経過】
内服開始してしばらくすると胃痛は6割くらいになったものの、完全には取れない状態でした。
胃酸分泌過多だけではなく、粘膜の知覚過敏も関与していると考え、知覚過敏を抑えるような漢方薬を追加したところ、痛みは徐々に改善しました。
今回の胃痛は環境の変化によって悪化しており、今後変化に体が順応することで落ち着くと考えますが、しばらく時間がかかりそうとのことでそのまま薬と漢方を継続し経過を見ています。
機能性ディスペプシアの胃痛は、胃酸分泌過多の他に粘膜の知覚過敏も関与しているといわれ、制酸剤があまり効かない場合に知覚過敏に有効な漢方などを使用すると症状が改善するケースがよく見られ、当院では漢方を組み合わせる治療も行っております。(漢方も保険診療にて処方できます。)
参考文献:※1Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16
※2Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer 2019;
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