繰り返す胃痛の原因はピロリ菌?萎縮性胃炎と除菌治療で改善した30代男性の実例
「市販薬を飲んでも胃痛が良くならない」
「定期的に胃もたれや張りを感じる」
そんな症状を繰り返している方はいませんか?
胃潰瘍や胃がんといった大きな病気が隠れていることもありますが、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が原因で慢性的な不調を起こしているケースもあります。
今回は、当院で実際に診断・治療を行った30代男性の症例をもとに、繰り返す胃痛の原因とピロリ菌除菌治療による改善効果について専門医の院長が解説します。
繰り返す胃痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
繰り返す胃痛がある方は、胃痛・腹痛の診療ページもあわせてご覧ください。
胃痛を繰り返す方へ
「いつもの胃痛」と思っていても、ピロリ菌感染、胃潰瘍、萎縮性胃炎、まれに胃がんなどが隠れていることがあります。症状が続く方は、自己判断で様子を見すぎず、一度ご相談ください。
繰り返す胃痛を起こす主な原因
胃痛を繰り返す場合、原因はひとつとは限りません。症状の出方、食事との関係、薬の使用歴、体重減少や貧血の有無などを確認しながら、必要に応じて胃カメラなどで原因を調べます。
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| ピロリ菌感染・萎縮性胃炎 | 胃痛、胃もたれ、腹部の張りなどが続くことがあります。胃がんリスクとも関連します【1】【2】。 |
| 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | みぞおちの痛み、空腹時痛、黒い便などを伴うことがあります。 |
| 機能性ディスペプシア | 胃カメラで明らかな異常がなくても、胃痛・胃もたれ・早期満腹感が続くことがあります。 |
| 逆流性食道炎 | 胸やけ、げっぷ、みぞおちの痛み、のどの違和感を伴うことがあります。 |
| 胃がん | 早期では無症状のこともあります。胃痛、胃もたれ、食欲不振、体重減少などをきっかけに見つかることがあります。 |
ピロリ菌による萎縮性胃炎とは?
ピロリ菌は、胃の粘膜に感染する細菌です。感染が長く続くと慢性的な胃炎を起こし、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎へ進むことがあります。
萎縮性胃炎がある方では、胃痛・胃もたれ・腹部膨満感などの症状が出ることがあります。一方で、症状がほとんどないまま健診や胃カメラで初めて指摘される方もいます。
また、ピロリ菌感染や胃粘膜萎縮は胃がんリスクと関連することが知られています。国立がん研究センターも、胃がんの発生要因としてピロリ菌感染を挙げており、除菌後も胃がんリスクがゼロにはならないため、胃内視鏡検査を受けることが大切としています【2】【3】。
ピロリ菌陽性を指摘された方は、ピロリ菌陽性に関する記事一覧も参考にしてください。
症例|30代男性「繰り返す胃痛」
【症状】
以前から週に1〜2回ほど胃痛を繰り返しているとのことで、胃カメラを希望されて当院を受診されました。
市販薬などで一時的に楽になることはあっても、胃痛を繰り返している状態でした。胃痛以外にも、胃もたれやお腹の張りを感じることがあるとのことでした。
【診察】
診察では、症状の経過、痛みの場所、食事との関係、内服薬、黒い便の有無、体重減少の有無、健診での異常の有無などを確認しました。
繰り返す胃痛では、次のような病気を鑑別する必要があります。
- 急性胃炎・慢性胃炎
- ピロリ菌感染による萎縮性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 機能性ディスペプシア
- 胃がん
- 胆石・膵炎など胃以外の病気
今回の患者さんは、症状を繰り返していることから、胃の粘膜を直接確認するために胃カメラ(内視鏡検査)を行う方針となりました。
【胃カメラ】
胃カメラでは胃潰瘍や胃がんなどの直接的な痛みの原因となる病変はありませんでしたが、萎縮性胃炎というピロリ菌感染による胃炎を認めました。

【治療】
ピロリ菌による萎縮性胃炎があると、慢性的な胃の症状(胃痛・胃もたれ・腹満)などが出ることがあり、除菌薬によるピロリ菌の除菌治療を行うこととしました。
【経過】
除菌薬を飲み終わってからしばらくすると胃痛を感じる頻度が減少し、服用1か月後にピロリ菌の除菌を呼気検査で判定したところ、無事にピロリ菌は除菌できていました。
このころには胃痛を感じる頻度はかなり減ったとのことで、一旦診療は終了となりました。
除菌後1年経過し、胃カメラの再検査に来られた時には、胃痛はほぼ消失しており、快適に暮らしているとのことでした。
胃カメラでも胃がんの発生はなく、定期的な胃カメラを続ける方針としています。
ピロリ菌除菌後も胃カメラが必要な理由
ピロリ菌を除菌すると、胃がんのリスク低下が期待できます。ただし、除菌をしても胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません【2】。
特に、すでに萎縮性胃炎が進んでいる方では、除菌後も胃粘膜の変化が残ることがあります。そのため、除菌が成功した後も、年齢・萎縮の程度・家族歴・過去の検査結果などに応じて、定期的な胃カメラで経過を確認することが大切です。
受診の目安
次のような症状がある方は、自己判断で市販薬を続けるだけでなく、消化器内科で相談することをおすすめします。
- 胃痛を何度も繰り返す
- 市販薬を飲んでも胃痛がすぐに再発する
- 胃もたれやお腹の張りが続く
- 食欲不振が続く
- 体重が減ってきた
- 黒い便が出た
- 貧血を指摘された
- ピロリ菌陽性を指摘された
- 萎縮性胃炎を指摘されたことがある
- 家族に胃がんになった方がいる
院長コメント
胃痛はよくある症状ですが、「よくある症状」だからこそ、原因がはっきりしないまま長く様子を見てしまう方も少なくありません。
今回の症例では、胃カメラで胃潰瘍や胃がんは認めませんでしたが、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が見つかりました。
除菌治療後に胃痛の頻度が減り、1年後の胃カメラでも胃がんを認めなかったことは、患者さんにとっても安心につながったと思います。
ピロリ菌は、胃痛や胃もたれの原因になるだけでなく、胃がんリスクとも関係します。胃痛を繰り返す方、ピロリ菌陽性を指摘された方、萎縮性胃炎を指摘された方は、放置せず一度ご相談ください。
胃痛を繰り返す方はご相談ください
池袋上田胃腸クリニックでは、胃痛・胃もたれ・ピロリ菌陽性・萎縮性胃炎・胃がんリスクが心配な方の診療を行っています。また鎮静剤による無痛胃カメラ検査にも対応しています。
胃痛でお悩みの方はご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問FAQ
Q. 繰り返す胃痛の原因はピロリ菌ですか?
A. ピロリ菌が原因の一つになっていることはあります。ピロリ菌感染により慢性胃炎や萎縮性胃炎が起こると、胃痛・胃もたれ・腹部の張りなどが続くことがあります。ただし、胃痛の原因は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃がんなどさまざまです。症状が続く場合は胃カメラなどで確認することが大切です。
Q. 市販薬で胃痛が良くなる場合でも受診した方がいいですか?
A. 市販薬で一時的に改善しても、胃痛を繰り返す場合は受診をおすすめします。薬で症状が隠れているだけで、胃炎、胃潰瘍、ピロリ菌感染、萎縮性胃炎などが残っていることがあります。特に、胃痛が何度も再発する場合や、胃もたれ・食欲不振・体重減少を伴う場合は検査で原因を確認しましょう。
Q. ピロリ菌による萎縮性胃炎とは何ですか?
A. ピロリ菌感染が長期間続くことで、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こり、胃粘膜が薄くなる状態を萎縮性胃炎といいます。萎縮性胃炎は、胃痛や胃もたれの原因になることがあるだけでなく、胃がんリスクとも関係するため、ピロリ菌の有無や胃粘膜の状態を確認することが大切です。
Q. ピロリ菌を除菌すると胃痛は治りますか?
A. ピロリ菌の除菌により胃痛や胃もたれが改善する方はいます。ただし、すべての胃痛がピロリ菌だけで起こるわけではありません。機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胆のうや膵臓の病気などが関係していることもあります。除菌後も症状が続く場合は、別の原因も含めて再評価が必要です。
Q. ピロリ菌除菌後も胃カメラは必要ですか?
A. 必要です。ピロリ菌を除菌すると胃がんリスクの低下が期待できますが、胃がんリスクがゼロになるわけではありません。特に、萎縮性胃炎がある方では、除菌後も定期的な胃カメラで胃の状態を確認することが大切です。
Q. ピロリ菌の除菌薬に副作用はありますか?
A. 下痢、軟便、味覚異常、発疹、腹部不快感などが出ることがあります。多くは軽度で一時的ですが、強い下痢、発疹、息苦しさなどがある場合は、自己判断で続けず医療機関に相談してください。過去に薬のアレルギーがある方は、診察時に必ずお伝えください。
Q. 除菌が成功したかどうかはどう確認しますか?
A. 一般的には、除菌薬を飲み終えたあと一定期間をあけて、尿素呼気試験や便中抗原検査などで確認します。除菌したつもりでも菌が残っていることがあるため、除菌判定を受けることが大切です。自己判断で「症状が良くなったから成功した」と決めつけないようにしましょう。
Q. 胃痛だけで胃がんの可能性はありますか?
A. 胃痛だけで胃がんと判断することはできませんが、胃がんが胃痛や胃もたれをきっかけに見つかることはあります。また、早期胃がんでは症状がはっきりしないこともあります。胃痛が続く、体重が減る、食欲が落ちる、黒い便が出る、貧血を指摘されたなどの場合は、胃カメラで確認することをおすすめします。
Q. 30代でもピロリ菌や萎縮性胃炎はありますか?
A. あります。ピロリ菌感染や萎縮性胃炎は中高年だけの問題ではなく、30代でも見つかることがあります。若い方でも、胃痛を繰り返す、胃もたれが続く、家族に胃がんの方がいる、健診でピロリ菌陽性を指摘された場合は、一度相談してください。
Q. 胃痛が続く場合、何科を受診すればよいですか?
A. 胃痛が続く場合は、消化器内科や胃腸内科の受診をおすすめします。胃カメラ、ピロリ菌検査、血液検査、腹部エコーなどを症状に応じて組み合わせることで、胃だけでなく胆のう・膵臓・腸などの病気も含めて確認できます。
まとめ
繰り返す胃痛は、単なる胃の疲れやストレスだけでなく、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が関係していることがあります。
✔ 胃痛を繰り返す場合は、胃炎・胃潰瘍・胃がん・ピロリ菌感染などの確認が大切です。
✔ ピロリ菌感染による萎縮性胃炎では、胃痛・胃もたれ・腹部膨満感が続くことがあります。
✔ ピロリ菌除菌により症状が改善するケースがあります。
✔ 除菌後も胃がんリスクがゼロになるわけではないため、定期的な胃カメラが重要です。
✔ 市販薬で一時的に良くなっても、胃痛を繰り返す場合は消化器内科で相談しましょう。
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「検査はつらい、怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、“苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ” を心がけています。
初めての方や検査に不安がある方でも、「ここで受けてよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
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東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック
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(北改札口を出たら左へ、突き当たり右側の階段20bから地上へ)
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
WEB予約は【こちら】
参考文献
- 日本ヘリコバクター学会. H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版. https://www.jshr.jp/medical/guideline/
- 国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がん 予防・検診. https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html
- 国立がん研究センター 多目的コホート研究. ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん罹患との関係. https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/287.html
- Sugano K, Tack J, Kuipers EJ, et al. Kyoto global consensus report on Helicobacter pylori gastritis. Gut. 2015;64(9):1353-1367.
- Ford AC, Forman D, Hunt RH, Yuan Y, Moayyedi P. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2014;348:g3174.
- Uemura N, Okamoto S, Yamamoto S, et al. Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med. 2001;345(11):784-789.
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
