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実際の治療例 “空腹時の胃痛・背部痛(十二指腸潰瘍)”

[2024.12.03]

当院や本院を受診された患者さんの実際の治療経過です

 

40代 男性 空腹時の胃痛・背部痛

【症状】

2週間ほど前から空腹時に胃痛と背中の痛みを感じ、すぐに治るだろうと思い様子をみていましたが一向に改善せず、

2日前から痛みが増悪したとのことで当院を受診されました

 

【診察】

胃痛・背部痛の原因としては、

  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化管疾患
  • 膵炎や膵臓などの膵疾患
  • 胆石などの胆のう疾患

などが考えられ、腹部エコー胃カメラにて状態をチェックすることにしました。

 

【検査】

腹部エコーでは胆のうや膵臓に異常はなく、続いて胃カメラを施行したところ、十二指腸潰瘍を認めました

十二指腸の入り口に潰瘍(黄色部分)を認めました

胃の中には萎縮性胃炎を認めピロリ菌も陽性であり、今回の潰瘍の原因と考えました。

関連ページ:

エコー検査 

胃カメラ 

 

【治療】

十二指腸潰瘍はピロリ菌薬剤性で発症する粘膜障害で、粘膜が炎症を起こして表面がえぐれてしまう状態です。

胃や十二指腸の粘膜は常に胃酸にさらされていますが、健康な状態では粘膜の防御機能によって胃酸により粘膜が傷つかないようになっています。

ただ、ピロリ菌痛み止めの薬などによりこの防御機能がうまく機能しなくなり、粘膜が傷つきただれてしまい、ついには一部が欠損し潰瘍になってしまいます。

胃痛や背部痛として感じることが多く、悪化すると潰瘍から出血したり穿孔(胃や十二指腸に穴が開くこと)し、緊急内視鏡や緊急手術になることもあります。

今回は潰瘍の程度はひどくなく出血もないことから薬で治療することとしました。

 

<治療内容>

①制酸薬

胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌を抑えることで、胃の粘膜の再生力で潰瘍は治癒していきます。今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。

②粘膜保護薬

胃の粘膜の防御機能を高め、潰瘍による胃痛を抑え改善をより早めます。

 ③食事指導

食事についてはしばらくの間は刺激の少ない粥食や消化のよい和食系のものを召し上がっていくこととしました。

 

【経過】

投薬開始翌日には痛みは取れてきており、3日目の再診時には痛みはほぼなくなったとのことでした。食事は通常食に戻し内服を続け、1か月後の再診時もほぼ問題ない状態でした。

十二指腸潰瘍は90%近くがピロリ菌が原因となっており、今回もピロリ菌が陽性であったため除菌も行うこととしました

(実際にピロリ菌除菌後の潰瘍の再発率は 1~2%と極めて低いことが報告されています※1。)

 

抗生剤と制酸剤の組み合わせを1週間飲んでもらい、1か月後に再診をして頂き、呼気検査にてピロリ菌の除菌成功を確認しました。

ただ、ピロリ菌除菌後も胃がんのリスクがあるため※2、胃カメラは定期的に行っていく方針としています。

 

十二指腸潰瘍や胃潰瘍は悪化すると出血したり、十二指腸・胃に穴が開いたり(穿孔)することもあるため、慢性的な痛みやその増悪、または強い胃痛背部痛がある場合はエコーや胃カメラの検査を行うことが大切です。

 

参考文献:※1Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16

※2Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer 2019;

 

文責:神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

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