発作のような胃の激痛|救急病院で胃痙攣と誤診された胆石胆嚢炎の実例
胃の発作的な痛み…本当に「ただの胃痙攣」?
「食事してしばらくして、急に胃がギュと締め付けられるように痛んだ」
「夜中に痛みで眠れず、救急に行ったら胃痙攣と言われた」
このような強い胃の痛み、本当に「胃痙攣」でしょうか?
発作のような胃の激痛は、実際には胆石発作や胆のう炎が原因になっていることがあります。
特に、食後2〜3時間ほどしてから強いみぞおちの痛みが出る、脂っこい食事の後に痛みを繰り返す、胃薬を飲んでもすっきりしないという場合は、胃だけでなく胆のう・胆管・膵臓なども含めて確認することが大切です。
今回は、実際に当院を受診された患者さんの症例をもとに、胃痙攣と思われた痛みの正体が胆石胆のう炎だったケースについて、症状・診察・検査・治療の流れを専門医の院長がわかりやすく解説します。
発作用の胃の激痛・繰り返す胃の痛みでお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
池袋上田胃腸クリニックでは、胃痛・腹痛・みぞおちの痛みの診療を行っています。
胃カメラだけでなく、必要に応じて腹部エコーや血液検査を組み合わせ、胃・胆のう・膵臓・腸などを総合的に確認します。
突然の胃の激痛・みぞおちの痛みを起こす主な原因
突然の強い胃痛やみぞおちの痛みは、胃の病気だけでなく、胆のう・膵臓・腸などの病気で起こることがあります。
「胃が痛い」と感じていても、痛みの場所がみぞおち付近の場合、実際には胃以外の臓器が原因になっていることも少なくありません。
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| 胆石発作・胆のう炎 | 食後、特に脂っこい食事の後に、みぞおち〜右上腹部の強い痛みが出ることがあります。 |
| 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | みぞおちの痛み、空腹時痛、吐き気、黒い便などを伴うことがあります。 |
| 急性膵炎 | みぞおちから背中にかけて強い痛みが出ることがあります。飲酒や胆石が関係することもあります。 |
| 急性胃腸炎 | 腹痛に加えて、下痢・吐き気・嘔吐・発熱を伴うことがあります。 |
| 虫垂炎・大腸憩室炎 | 最初はみぞおち付近の痛みとして始まり、時間とともに痛む場所が変わることがあります。 |
強い胃痛や腹痛が続く場合は、胃だけでなく胆のう・膵臓・腸なども含めて確認することが重要です。
胆石・胆のう炎とは?
胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的にためておく臓器です。胆汁は脂肪の消化を助ける液体で、食事をすると胆のうが収縮し、胆汁を十二指腸へ送り出します。
胆石とは、胆のうや胆管の中にできる石のようなかたまりです。胆石が胆のうの出口付近にはまり込むと、胆汁の流れが悪くなり、発作的な痛みや胆のう炎を起こすことがあります。
胆石発作や胆のう炎では、食後2〜3時間ほどしてから、みぞおちから右上腹部にかけて強い痛みが出ることがあります。痛みが背中や右肩に響くように感じる方もいます。
一時的な発作で治まることもありますが、痛みを繰り返す場合や炎症を伴う場合には、胆のう摘出手術が検討されることがあります【1】【2】。
症例紹介|40代男性「食後しばらくしてからのみぞおちの激痛」
【症状】
昨晩に胃の激痛があり救急外来を受診。
「胃痙攣」と言われ一旦投薬で帰宅となりましたが、朝になっても痛みが続くとのことで当院を受診されました。
【診察】
以前にも同様の発作様の胃の激痛を数回起こしており、
・いずれも食後2時間位してからの痛み
・昨日も夕食に唐揚げを食べてしばらくしてからの激痛
だったとのことで、胃というよりも胆石発作や胆嚢炎の可能性が高いと考え腹部エコーを行いました。
【エコー検査】

胆のうの短径が50㎜大と腫大し(青矢印)、壁が3㎜大と肥厚し(赤矢印)白く見えています。

胆のうの出口付近に11㎜大の胆石(黄色部分)を認め、胆石がはまり込んだことによって起こる胆石胆嚢炎と診断しました。
胃カメラで異常がない場合でも、胆のう・胆管・膵臓などに原因が隠れていることがあります。
【治療・経過】
今回の患者さんは、過去にも同じような発作を繰り返しており、今回も痛みが持続していました。
胆石胆のう炎では、症状や炎症の程度によって、抗菌薬などで炎症を抑える治療、入院での管理、胆のう摘出手術などが検討されます【2】【3】。
今回は、入院での治療と手術が必要と判断し、対応可能な高次医療機関へ紹介しました。
その後、手術は無事に終了し、術後は食後の発作的な痛みは出なくなりました。
胃痙攣と言われても、胆石が隠れていることがあります
「胃が痛い」と感じると、多くの方は胃炎や胃痙攣を想像されます。
しかし、みぞおち付近には胃だけでなく、胆のう、胆管、膵臓、十二指腸などの臓器があります。そのため、同じようなみぞおちの痛みでも、原因は人によって異なります。
特に、以下のような場合は、胆石発作や胆のう炎の可能性も考える必要があります。
- 食後しばらくしてから痛みが出る
- 脂っこい食事の後に痛みが出る
- みぞおちから右上腹部にかけて痛む
- 背中や右肩に痛みが響く
- 同じような痛みを何度も繰り返している
- 胃薬を飲んでもすっきりしない
- 発熱や吐き気を伴う
このような場合は、胃カメラだけではなく、腹部エコーや血液検査で胆のう・胆管・膵臓の状態を確認することが大切です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍など、胃や十二指腸の病気が疑われる場合には胃カメラも重要です。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、早めに消化器内科を受診してください。
- 突然の強いみぞおちの痛みがある
- 食後に繰り返し強い痛みが出る
- 脂っこい食事の後に痛みが出る
- 痛みが数時間以上続く
- 発熱を伴う
- 吐き気・嘔吐を伴う
- 背中や右肩に痛みが響く
- 冷や汗が出るほど痛い
- 皮膚や白目が黄色く見える
- 胃薬を飲んでも改善しない
強い痛み、発熱、嘔吐、黄疸を伴う場合は、胆のう炎や胆管炎など緊急性のある病気の可能性もあります。症状が強い場合は、夜間・休日でも救急受診を検討してください。
院長からのコメント
胆石胆のう炎は、患者さんご自身としては「胃の痛み」と感じることが多く、胃痙攣や胃炎と考えられてしまうことがあります。
もちろん、みぞおちの痛みの原因として胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などは重要です。しかし、今回のように食後しばらくしてから発作的に痛む、脂っこい食事の後に痛む、同じような痛みを繰り返すという場合には、胆石や胆のう炎も必ず考える必要があります。
胃の症状と思っていても、原因が胃以外にあることは少なくありません。
当院では、症状の経過を丁寧に確認し、必要に応じて胃カメラ・腹部エコー・血液検査を組み合わせて、痛みの原因を見極めるようにしています。
「胃痙攣と言われたけれど痛みを繰り返す」「胃薬を飲んでも改善しない」「食後にみぞおちが強く痛む」という方は、一度ご相談ください。
よくある質問
Q1. 胃痙攣と言われたのに胆石のことはありますか?
はい、あります。食後しばらくしてから強いみぞおちの痛みが出る場合、胃そのものではなく胆石発作や胆のう炎が原因のことがあります。胃薬で一時的に落ち着いても、痛みを繰り返す場合は腹部エコーで胆のうを確認することが大切です。
Q2. 胆石は自然に治りますか?
胆石が自然に消えることは多くありません。小さい胆石は症状を出さずに経過することもありますが、痛みを繰り返す場合や胆のう炎を起こした場合は、手術を含めた治療が検討されます。
Q3. 胆石発作はどんな食べ物で起こりやすいですか?
脂っこい食事、揚げ物、肉の脂身、食べ過ぎなどをきっかけに起こることがあります。食後に胆のうが収縮するため、胆石が出口付近にはまり込み、痛みが出ることがあります。
Q4. 胆石胆のう炎は胃カメラでわかりますか?
胆石や胆のう炎は、胃カメラでは直接診断できません。胃カメラは胃・十二指腸の病気を確認する検査です。胆のうの状態を確認するには、腹部エコー、血液検査、CT、MRIなどが必要になります。
Q5. 胆石胆のう炎の診断には何の検査が有効ですか?
腹部エコーが有用です。胆石の有無、胆のうの腫れ、胆のう壁の肥厚、炎症の所見などを確認できます。血液検査では白血球数やCRP、肝胆道系酵素などを確認します。
Q6. 胆石発作の痛みはどのくらい続きますか?
数十分から数時間で一旦落ち着くこともありますが、胆のう炎を伴う場合は痛みが持続することがあります。痛みが長く続く、発熱する、吐き気が強い場合は早めに受診してください。
Q7. 胆石があっても症状がなければ放置してよいですか?
無症状の胆石は経過観察となることもあります。ただし、痛みを繰り返す場合、胆のう炎を起こした場合、胆管に石が落ちる可能性がある場合などは治療が必要になることがあります。定期的に腹部エコーで確認することが大切です。
Q8. 胆石胆のう炎は再発しますか?
胆のうを摘出すれば、胆のう内の胆石による胆のう炎は基本的に再発しません。一方で、手術をせずに経過を見る場合は、胆石発作や胆のう炎を繰り返すことがあります。
Q9. 胆石胆のう炎は命に関わりますか?
重症化すると、胆のう穿孔、腹膜炎、敗血症などを起こし、命に関わることがあります。強い痛み、発熱、嘔吐、黄疸を伴う場合は、早急な受診が必要です。
Q10. 胃薬を飲んでも胃の激痛が治らない場合はどうすればよいですか?
胃薬で改善しない強い痛みがある場合、胃以外の病気が原因の可能性があります。胆石、胆のう炎、急性膵炎、虫垂炎、大腸憩室炎なども考える必要があるため、腹部エコーや血液検査を含めて消化器内科で確認することをおすすめします。
まとめ
突然の胃の激痛やみぞおちの痛みは、胃炎や胃痙攣だけでなく、胆石発作や胆のう炎が原因になっていることがあります。
- 食後しばらくしてからの強いみぞおちの痛みは、胆石発作の可能性があります。
- 脂っこい食事の後に痛みが出る場合は、胆のうの病気も考える必要があります。
- 胃カメラだけでは胆石や胆のう炎は診断できません。
- 胆のう・胆管・膵臓の確認には、腹部エコーや血液検査が重要です。
- 発熱、吐き気、痛みの持続を伴う場合は、早めの受診が必要です。
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、初めての方や不安がある方でも、「ここで受けてよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
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東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック
JR 池袋駅 北口の地上出口より徒歩5分。
(北改札口を出たら左へ、突き当たり右側の階段20bから地上へ)
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
参考文献
- 日本消化器病学会. 胆石症診療ガイドライン 2021(改訂第3版).
- Yokoe M, et al. Tokyo Guidelines 2018: diagnostic criteria and severity grading of acute cholecystitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018.
- Okamoto K, et al. Tokyo Guidelines 2018: flowchart for the management of acute cholecystitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018.
- Mayumi T, et al. Tokyo Guidelines 2018: management bundles for acute cholangitis and cholecystitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018.
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
