実際の治療例 【検診でピロリ菌を指摘されたが放置していたら十二指腸潰瘍になった】
「検診でピロリ菌を指摘されたけれど、症状がないからそのままにしている」――
このような方は少なくありません。
しかし、ピロリ菌は胃や十二指腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんのリスクを高めることが知られています。【1】【2】【3】
今回は、検診でピロリ菌陽性を指摘されながら放置していた結果、十二指腸潰瘍を発症した50代男性の実例をもとに、症状、診断、治療、再発予防までを専門医の院長が分かりやすく解説します。
検診でピロリ菌を指摘された方へ
池袋上田胃腸クリニックでは、ピロリ菌外来、胃カメラ検査、除菌治療まで一貫して対応しています。
「症状がないけれど受診した方がよいか迷っている」という方も、お気軽にご相談ください。
ピロリ菌感染とは
ピロリ菌は胃の中に住みつく細菌で、胃や十二指腸の粘膜に持続的な炎症を起こします。これにより、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になります。【2】【3】
自覚症状がないまま経過することも多いため、検診で指摘された段階で評価と対応を始めることが大切です。
十二指腸潰瘍とは
十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や薬剤の影響などによって、十二指腸の粘膜防御機能が低下し、胃酸で粘膜が傷ついて深くえぐれた状態です。
典型的には空腹時のみぞおちの痛みとして感じることが多く、悪化すると出血や穿孔(穴があくこと)を起こすことがあります。
▶みぞおちの痛みがある方は、胃痛・腹痛ページもあわせてご覧ください。
症例|50代男性「検診でピロリ菌を指摘されたが放置してしまっている」
【症状】
数年前から人間ドックでピロリ菌陽性を指摘されていましたが、自覚症状がないため放置している状態でした。
2週間前頃から空腹時に胃の痛みが続くようになり心配で当院を初診されました。
【診察】
空腹時に感じる胃の痛みは
- 十二指腸潰瘍
- 胃潰瘍
- 胃酸分泌過多などの胃の機能異常
- ピロリ菌関連の炎症性変化
などの患が原因として考えられ、特にピロリ菌がいる方には胃潰瘍・十二指腸潰瘍のリスクがあるため、胃内視鏡(胃カメラ)にて状態をチェックすることにしました。
【検査】
胃内視鏡(胃カメラ)を施行したところ、胃にピロリ菌由来の萎縮性胃炎および十二指腸に潰瘍を認め、ピロリ菌による十二指腸潰瘍と診断しました

内視鏡では胃の粘膜の凹凸や色調変化が目立ち、実際にピロリ菌の反応も陽性であり、ピロリ菌由来の萎縮性胃炎と診断しました

十二指腸には白苔を伴った陥凹=潰瘍を認め(青丸部分)、十二指腸潰瘍と診断しました。 潰瘍とは粘膜の表面が炎症によりえぐれて、粘膜下の組織が露出する状態を指します。
【治療】
今回は潰瘍の程度はひどくなく出血もないことから薬で治療することとしました。
①制酸薬
胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌を抑えることで、胃の粘膜の再生力で潰瘍は治癒していきます。今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。
②粘膜保護薬
粘膜の防御機能を高め、潰瘍による胃痛を抑え改善をより早めます。
③食事指導
食事についてはしばらくの間は刺激の少ない粥食や消化のよい和食系のものを召し上がっていくこととしました。
【経過】
投薬開始翌日には痛みは取れ、2週間後の再診時には痛みはほぼなくなったとのことでした。食事は通常食に戻し内服を続け、1か月後の再診時もほぼ問題ない状態でした。
十二指腸潰瘍は90%近くがピロリ菌が原因となっており、今回もピロリ菌が陽性であったため除菌も行うこととしました。
(実際にピロリ菌除菌後の潰瘍の再発率は 1~2%と極めて低いことが報告されています※1。詳しくは、ピロリ菌と潰瘍の関係を参照ください。)
抗生剤と制酸剤の組み合わせを1週間飲んでもらい、1か月後に再診をして頂き、呼気検査にてピロリ菌の除菌成功を確認しました。
ただ、ピロリ菌除菌後も胃がんのリスクがあるため※2、胃カメラは定期的に行っていく方針としています。
受診の目安
次のような場合は、早めに消化器内科を受診してください。
- 検診や人間ドックでピロリ菌陽性を指摘された
- 空腹時のみぞおちの痛みが続いている
- 胃痛を繰り返す
- 黒い便、吐血、強い腹痛がある
- 除菌後の定期フォローを受けていない
特に、黒色便・吐血・急激な強い腹痛がある場合は、出血や穿孔の可能性もあるため、速やかな受診が必要です。
院長コメント
ピロリ菌は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍だけでなく、胃がんの大きな原因でもあります。【2】【3】
今回のように、検診でピロリ菌を指摘されても「症状がないから大丈夫」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、症状がない時期にも胃の中では炎症が進んでいることがあります。
ピロリ菌を指摘された際には、胃カメラで現在の胃の状態を確認し、必要に応じて除菌治療を受けることが大切です。
また、除菌後も胃がんリスクが完全にゼロになるわけではないため、定期的な胃カメラを続けていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:ピロリ菌を除菌すれば胃がんになりませんか?
胃がんのリスクは大きく下がりますが、ゼロになるわけではありません。特に萎縮性胃炎がある方では、除菌後も定期的な胃カメラが大切です。【2】【3】
Q:十二指腸潰瘍ではどのような症状が出ますか?
典型的には空腹時のみぞおちの痛みです。悪化すると出血や穿孔を起こすことがあります。
Q:検診でピロリ菌陽性と言われただけで、症状がありません。受診した方がよいですか?
はい。症状がなくても、萎縮性胃炎や潰瘍、将来の胃がんリスクが隠れている可能性があるため、胃カメラを含めた評価をおすすめします。
Q:ピロリ菌は自然に治りますか?
自然にいなくなることは多くありません。放置すると粘膜障害が進行することがあるため、医療機関で除菌治療を受けることが大切です。
Q:除菌治療は1回で必ず成功しますか?
1回で成功する方が多いですが、必ずではありません。うまくいかなかった場合は、薬を変更して再除菌を行うことがあります。
Q:ピロリ菌除菌後も胃カメラは必要ですか?
はい。除菌によりリスクは下がりますが、ゼロではありません。胃がんの早期発見のためにも定期的な胃カメラが重要です。【2】
Q:空腹時の胃痛はすべて十二指腸潰瘍ですか?
いいえ。胃潰瘍、胃炎、胃酸分泌過多、機能性ディスペプシアなどでも似た症状が出ることがあります。症状だけで判断せず、必要に応じて胃カメラで確認します。
Q:ピロリ菌がいると必ず十二指腸潰瘍になりますか?
必ずではありませんが、十二指腸潰瘍の大きな原因のひとつです。特に胃痛がある場合は放置せず受診しましょう。
Q:ピロリ菌の除菌はどのように確認しますか?
一般的には呼気検査で確認します。当院でも除菌後に検査を行い、成功したかどうかを判定します。
Q:家族がピロリ菌陽性だった場合、自分も検査を受けた方がよいですか?
ご家族にピロリ菌感染がある場合、心配な方は一度医療機関で相談することをおすすめします。特に検診で異常を指摘されたことがある方や胃の症状がある方は、検査を検討しましょう。
まとめ
ピロリ菌は自覚症状がないまま経過することも多い一方で、放置すると十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃がんのリスクにつながります。
✔ 検診でピロリ菌陽性を指摘されたら、症状がなくても放置しない
✔ 空腹時のみぞおちの痛みは十二指腸潰瘍のサインのことがある
✔ 胃カメラで現在の胃・十二指腸の状態を確認することが重要
✔ 除菌治療で潰瘍の再発リスクは大きく低下する【1】
✔ 除菌後も定期的な胃カメラを続けることが大切【2】
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「検査はつらい、怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、“苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ” を心がけています。
初めての方や検査に不安がある方でも、「ここで受けてよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
〒1710014
東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック
JR 池袋駅 北口の地上出口より徒歩5分。
(北改札口を出たら左へ、突き当たり右側の階段20bから地上へ)
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WEB予約は【こちら】
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
- Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacter pylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter. 2004;9:9-16.
- Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer. 2019.
- 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 編. H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版. 先端医学社.
- 日本内科学会雑誌 110巻1号 p10-18.
