実際の治療例【明け方の急な吐き気と腹痛…その原因と治療】
「明け方に急に吐き気が出て、腹痛で目が覚めた」
「何度も吐いてしまい、お腹の痛みも続いている」
このような症状が突然出ると、食あたりなのか、胃腸炎なのか、それとも急いで受診した方がよい病気なのか、不安になる方も多いと思います。
急な吐き気・嘔吐・腹痛は、感染性胃腸炎や食中毒で起こることが多い一方で、急性虫垂炎、腸閉塞、アニサキス症、胆のう炎、膵炎など、早期の診断が必要な病気が隠れていることもあります。
今回は、明け方から急な吐き気と腹痛が出現し、腹部エコーと血液検査で小腸の感染性腸炎と診断された20代女性の実際の治療例をもとに、症状の原因、検査、治療、受診の目安をわかりやすく解説します。
吐き気・腹痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
急な吐き気や腹痛は、原因によって治療方針が大きく変わります。
池袋上田胃腸クリニックでは、胃痛・腹痛・吐き気・下痢などの胃腸症状に対して、診察、血液検査、腹部エコーなどを組み合わせて原因を確認しています。お困りの科はご相談ください。
明け方の急な腹痛・嘔気を起こす主な原因
急な吐き気・嘔吐・腹痛の原因はひとつではありません。特に、明け方や朝方に突然症状が出た場合は、前日から数日前に食べたもの、発熱や下痢の有無、痛みの場所、痛みの強さ、嘔吐の回数などを確認することが重要です。
| 主な原因 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 感染性腸炎・感染性胃腸炎 | 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱など | 脱水に注意。症状が強い場合は受診が必要です。 |
| 食中毒 | 食後数時間〜数日で吐き気、腹痛、下痢、発熱など | 生もの、加熱不十分な食品、保存状態の悪い食品が関係することがあります。 |
| 急性虫垂炎 | みぞおちやおへそ周囲の痛みから始まり、右下腹部へ移動することがあります。 | 悪化すると腹膜炎につながることがあるため注意が必要です。 |
| 腸閉塞 | 強い腹痛、吐き気、嘔吐、お腹の張り、便やガスが出ないなど | 放置できない病気で、早急な診断が必要です。 |
| アニサキス症 | 刺身や海鮮を食べた後に、急な強い胃痛・吐き気が出ることがあります。 | 胃カメラで虫体を確認し、除去が必要になることがあります。 |
| 胆のう炎・胆石発作 | みぞおち〜右上腹部の痛み、吐き気、発熱など | 脂っこい食事の後に起こることがあります。 |
| 膵炎 | みぞおちの強い痛み、背中の痛み、吐き気など | 重症化することがあり、血液検査や画像検査が重要です。 |
感染性小腸炎とは?
今回の症例では、検査で小腸の感染性腸炎と診断しました。ここでは、症例につながる病気を中心に短く整理します。
感染性小腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体によって小腸に炎症が起こる状態です。感染性胃腸炎では、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などがみられることがあります[1]。
食中毒では、原因となる細菌やウイルスが食べ物に付着し、体内に入ることで症状が起こります。厚生労働省は、食中毒予防の基本として「つけない・増やさない・やっつける」を挙げています[2]。
今回の症例では、2日前に海鮮丼を食べていたこと、急な吐き気・腹痛が出たこと、腹部エコーで下部小腸の炎症像を認めたことから、食中毒に伴う感染性小腸炎が疑われました。
急性虫垂炎との違い
急性虫垂炎は、いわゆる「盲腸」と呼ばれる病気です。初期にはみぞおちやおへそ周囲の痛み、吐き気から始まり、その後に右下腹部の痛みが強くなることがあります。
感染性腸炎と症状が似ることもあるため、腹痛の場所、押したときの痛み、発熱、血液検査の炎症反応、腹部エコー所見などを総合して判断します。
腸閉塞との違い
腸閉塞では、腸の流れが悪くなり、強い腹痛、吐き気・嘔吐、お腹の張り、便やガスが出にくいといった症状が出ます。
嘔吐が続く、腹部膨満が強い、痛みが波のように繰り返す場合には、腸閉塞の鑑別も必要です。
アニサキス症との違い
アニサキス症は、刺身や寿司などの魚介類を食べた後に、胃や腸にアニサキスが入り込むことで起こります。胃アニサキス症では、食後数時間で強い胃痛や吐き気が出ることがあります。
今回の症例では、腹部エコーで小腸の炎症像を認め、胃の強い局所痛が中心ではなかったため、小腸の感染性腸炎として治療を行いました。
吐き気・腹痛・下痢がある場合は、以下のページも参考になります。
20代 女性 明け方からの急な吐き気と腹痛
【症状】
明け方から急に吐き気と腹痛で目が覚め、トイレで嘔吐。
その後も数回嘔吐があり腹痛も持続するとのことで当日朝に当院を受診されました。
【診察】
来院時も吐き気が続いており、触診では腹部全体に鈍痛がある状態でした。
症状からは、
- 食あたりなどによる感染性腸炎
- 急性虫垂炎(いわゆる盲腸)
- 腸閉塞
- アニサキス症 などが考えられ、
腹部エコーと血液検査で状態を評価しました。
【検査】
腹部エコーで下部小腸に炎症像、および血液検査にて炎症反応の上昇があり、小腸の感染性腸炎と診断しました。
【治療】
急性に起こる小腸炎は主に食中毒が原因となります。
今回は問診で確認すると2日前に海鮮丼を食べたとのことで原因と考えられました。
治療内容
①内服治療;整腸剤 漢方薬
下痢・腹痛といった胃腸炎症状を和らげます。
②食事指導
腸炎の場合は炎症による腸の機能低下のため、消化吸収能力が著しく低下します。
そのため水分摂取はOS1やポカリスエットなどの体に吸収されやすいもの、食事はおかゆなどの消化しやすいものを召し上がっていただきました。
【経過】
受診当日の夕方くらいまで症状が続きましたが、当日の夜辺りから次第に和らぎ、翌日には嘔気・腹痛とも低下し、
4日後に再診頂いた際にはほぼ改善している状態で、そのまま終診となりました。
受診の目安
急な吐き気・腹痛の多くは一時的な胃腸炎で改善することもありますが、次のような場合は早めの受診が必要です。
早めの受診をおすすめする症状
- 嘔吐を繰り返して水分がとれない
- 強い腹痛が続く
- 痛みがどんどん強くなっている
- 右下腹部の痛みが強い
- 発熱を伴う
- 血便や黒い便がある
- お腹の張りが強く、便やガスが出ない
- 立ちくらみ、尿が少ない、口の渇きなど脱水が疑われる
- 妊娠の可能性がある
- 高齢者、基礎疾患がある方、免疫力が低下している方
特に、強い腹痛、繰り返す嘔吐、脱水、血便を伴う場合は、早急な評価が必要です。
院長からのコメント
急な吐き気や腹痛は、感染性腸炎や食中毒のように数日で改善する病気で起こることもあります。しかし、初期症状だけでは虫垂炎や腸閉塞などとの区別が難しいことがあります。
今回の症例では、腹部エコーで小腸の炎症像を確認し、血液検査で炎症反応も評価したことで、小腸の感染性腸炎として治療方針を立てることができました。
「明け方に急に吐き気と腹痛が出た」「何度も吐いている」「腹痛が続いて不安」という場合は、無理に我慢せず、消化器内科で原因を確認することが大切です。
池袋上田胃腸クリニックではWEB予約・電話予約を受け付けています。
池袋で急な腹痛・吐き気・下痢などの胃腸症状でお困りの方は、お力になれますので池袋上田胃腸クリニックへご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問FAQ
Q1. 明け方に急な吐き気と腹痛が出る原因は何ですか?
A. 感染性腸炎、食中毒、急性虫垂炎、腸閉塞、アニサキス症、胆のう炎、膵炎などが考えられます。症状の強さ、痛みの場所、発熱や下痢の有無、食事歴などを確認して原因を判断します。
Q2. 食あたりと感染性腸炎は同じですか?
A. 食あたりは、食べ物に付着した細菌やウイルスなどが原因で起こる感染性腸炎・胃腸炎の一種として説明されることが多いです。ただし、感染性腸炎には人から人へうつるウイルス性胃腸炎なども含まれます。
Q3. 海鮮を食べた2日後に吐き気と腹痛が出ることはありますか?
A. あります。原因となる細菌やウイルスによって、食後数時間で症状が出ることもあれば、1〜数日後に症状が出ることもあります。食事内容と発症までの時間は診断の参考になります。
Q4. 急な吐き気と腹痛だけで、下痢がなくても胃腸炎はありますか?
A. あります。感染性胃腸炎では、嘔吐が先に出て後から下痢が出る場合や、嘔吐・腹痛が中心で下痢が目立たない場合もあります。ただし、虫垂炎や腸閉塞なども似た症状を起こすため注意が必要です。
Q5. どのような場合にすぐ受診した方がよいですか?
A. 水分がとれないほど嘔吐する、強い腹痛が続く、痛みが悪化する、発熱や血便がある、お腹の張りが強い、右下腹部が強く痛む、脱水が疑われる場合は早めに受診してください。
Q6. 感染性小腸炎は腹部エコーでわかりますか?
A. 腹部エコーで腸管の腫れ、拡張、腸液の貯留、周囲の炎症所見などを確認できることがあります。血液検査や診察所見と合わせて総合的に判断します。
Q7. 吐き気と腹痛があるとき、胃カメラは必要ですか?
A. 全員に必要なわけではありません。強い胃痛、刺身後の激痛、胃潰瘍やアニサキス症が疑われる場合などは胃カメラを検討します。症状や診察所見に応じて必要な検査を判断します。
Q8. 感染性腸炎のときは何を食べればよいですか?
A. 吐き気が強い間は無理に食べず、水分補給を優先します。症状が落ち着いてきたら、おかゆ、うどん、スープ、豆腐、白身魚など消化のよいものから少しずつ再開します。
Q9. 下痢止めは飲んでもよいですか?
A. 感染性腸炎が疑われる場合、自己判断で下痢止めを使うと病原体の排出を妨げる可能性があります。血便、発熱、強い腹痛がある場合は特に自己判断で使用せず、医師に相談してください。
Q10. 症状が改善した後も受診は必要ですか?
A. 軽症で完全に改善していれば経過観察となることもあります。ただし、腹痛が残る、下痢が長引く、血便がある、体重減少がある、症状を繰り返す場合は、別の病気が隠れていないか確認するために受診をおすすめします。
まとめ
・急な吐き気・腹痛は要注意:感染性腸炎のこともあれば、虫垂炎や腸閉塞など命に関わる病気が隠れていることもあります。
・早期受診が大切:自己判断で放置せず、吐き気や腹痛が強い・繰り返す場合は消化器内科を受診しましょう。
・検査で原因特定が可能:腹部エコーや血液検査により、腸炎かそれ以外かを見分けられます。
・治療と食事指導で回復:整腸剤や漢方薬に加え、水分補給や消化の良い食事が回復のポイント。
💡当院は池袋駅から徒歩5分程度でアクセス可能です。お気軽にご相談ください。
📞 お電話でのお問い合わせ:03-5953-5903
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
関連ページ
医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
〒1710014
東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック
JR 池袋駅 北口の地上出口より徒歩5分。
(北改札口を出たら左へ、突き当たり右側の階段20bから地上へ)
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
WEB予約は【こちら】
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
- 厚生労働省:感染性胃腸炎、ノロウイルスに関する情報
- 厚生労働省:食中毒予防のポイント
- Shane AL, et al. 2017 Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea. Clinical Infectious Diseases. 2017.
- CDC:Norovirus, treatment and prevention of dehydration
- NIDDK:Treatment of Viral Gastroenteritis
- 急性腹症診療ガイドライン2025 第2版
