実際の治療例 “急に発症したみぞおちの痛み・右下腹部痛(急性虫垂炎)”
当院や本院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
20代女性 急に発症したみぞおちの痛み・右下腹部痛
【症状】
前日夜から急にみぞおちの痛みが出現。
改善するかと思い様子を見ていましが、どんどん痛みが増強してきたとのことで当院を受診されました。
【診察】
診察時にはみぞおちに加え右下腹部にも痛みが出てきており、触診上でも右下腹部にかなり強い痛みがありました。
急激に症状が発症していることと、痛みがみぞおちから右下腹部に移動してきたことから急性虫垂炎(いわゆるもう腸)を疑いエコー検査を行いました。
【検査】
エコー検査では、虫垂の肥厚を認め急性虫垂炎と診断しました。
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【治療】
エコー検査では虫垂の穿孔(穴が開くこと)はなく、血液検査でも炎症は軽症であり、抗生剤の点滴で炎症を散らすこととしました。
翌日の再診時には痛みはかなり落ち着いており、炎症は改善傾向であり、3日ほど抗生剤を続け、最終的に痛みの改善、エコーや血液検査でも炎症の鎮静化を確認し、いったん治療終了としました。
薬で散らした場合は再燃するリスクもあるため、落ち着いた後に予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります。(今回は患者さん本人が希望されず、手術までは行いませんでした。)
虫垂炎は発症初期は上腹部やみぞおちの痛みで発生し、右下に痛みが移動してくるという経過をとることが多くの場合に見られます。
みぞおちの痛みを感じるため、発症初期には「胃炎」「急性胃腸炎」などと誤診されてしまうこともありますが、適切な検査をすれば診断がつくことがほとんどなので、
当院では腹部エコーや血液検査などを行い、なるべく早期に正しい診断をつけることに力を入れています。
早期に診断をつけることができれば、重症化する前に治療を開始することができ、今回のように抗生剤で散らすことでほとんどの場合が改善します。
ただし、散らした場合は15~30%程度の再燃リスクもあるため※1、落ち着いた後に1-3か月をめどに予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります※2。
また、糞石などの重症化のリスクがある場合や痛みが激しい場合、穿孔が疑われる場合などは緊急OPEになる可能性があり、
そのような場合は当院では速やかに高次医療機関にご紹介し、緊急OPEにも対応してもらえる医療体制で治療を行ってもらえるようにしております。
参考文献:
※1)Tekin A, Kurtoglu HC, Can I, et al: Routine interval appendectomy is unnecessary after conservative treatment of appendiceal mass. Colorectal Dis 10:465-468,2018
※2)前田 大,藤崎真人,高橋孝行ほか:成人の虫垂膿瘍に対する interval appendectomy.日臨外会誌 64:2089-2094,2003
文責:神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
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