下腹部痛と発熱は大腸憩室炎?早期受診で外来治療できた実例
下腹部の痛みと発熱が同時に出ている場合、「少しお腹を壊しただけかな」と様子を見てしまう方も少なくありません。
しかし、痛みが続く、押すと強く痛む、歩くとお腹に響く、発熱を伴うといった場合には、腸に炎症が起きている可能性があります。
特に中高年の方では、大腸にできた小さなくぼみである「憩室」に炎症が起こる大腸憩室炎が原因となることがあります。
大腸憩室炎は、軽症であれば外来治療で改善することもありますが、放置すると炎症が悪化し、膿瘍や穿孔、腹膜炎などにつながることもあるため注意が必要です。
今回は、下腹部痛と発熱をきっかけに受診され、腹部エコー検査と血液検査で大腸憩室炎と診断し、外来治療で改善した50代女性の実例を専門医の院長が分かりやすくご紹介します。
「下腹部痛が続いている」「熱も出てきた」「大腸憩室炎が心配」という方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
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下腹部痛と発熱があるときに考える病気
下腹部痛に発熱を伴う場合、単なる腹痛ではなく、腸や泌尿器、女性では婦人科系の炎症が関係していることがあります。
なかでも、大腸の一部にできた袋状のくぼみである「憩室」に炎症が起こると、大腸憩室炎として左下腹部や右下腹部の痛み、発熱、違和感などが出ることがあります。
下腹部痛と発熱で考える主な病気には、次のようなものがあります。
- 大腸憩室炎:左右どちらかの下腹部痛、発熱、押すと痛いなどの症状が出ることがあります。
- 感染性腸炎:腹痛に加えて、下痢、吐き気、嘔吐、発熱を伴うことがあります。
- 急性虫垂炎:みぞおちやおへその周りの痛みから始まり、右下腹部へ痛みが移動することがあります。
- 虚血性腸炎:急な腹痛や下痢、血便を伴うことがあります。
- 尿管結石・膀胱炎:下腹部痛に加えて、血尿、排尿時痛、頻尿などを伴うことがあります。
- 婦人科系の病気:卵巣や子宮の病気でも下腹部痛や発熱が出ることがあります。
このように、下腹部痛と発熱の原因は複数あるため、痛みの場所、発熱の程度、便通の変化、吐き気、血便の有無などを確認しながら、必要に応じて血液検査や腹部エコー検査を行うことが大切です。
実際の治療例|50代女性「下腹痛と発熱がある」
【症状】
2日前から左下腹部に違和感があり、「そのうち治るだろう」と様子を見ていました。
しかし翌日も改善せず、痛みはチクチクとした感覚に変化。
病院に行こうか迷っていましたが、夜には37℃台の発熱も出てきたため、翌朝当院を受診されました。
【診察・検査】
診察では痛みが左下腹部に限局。
数年前に受けた大腸カメラでS状結腸に憩室があると指摘されていたため、大腸憩室炎を疑いました。
血液検査
軽度の炎症反応を認めました。
腹部エコー検査
痛みの場所に一致してS状結腸に憩室(図:赤部分)を認め、周囲の大腸の壁の肥厚(図:水色部分)が描出され、大腸憩室炎と診断しました。
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大腸憩室炎とは?
大腸憩室炎とは、大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみである「憩室」に、便や細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。
憩室そのものがあるだけでは症状がないことも多いですが、そこに炎症が起こると、腹痛や発熱、押すと痛い感じなどが出ることがあります。
大腸憩室炎では、痛みの場所は憩室ができている部位によって異なります。 日本では右側の大腸に憩室ができる方もいますが、中高年以降ではS状結腸など左側の大腸に炎症が起こり、左下腹部痛として症状が出ることもあります。
代表的な症状は、次のようなものです。
- 左右どちらかの下腹部痛
- 発熱
- お腹を押すと痛い
- 歩く、咳をする、体を動かすとお腹に響く
- 便秘や下痢などの便通変化
- 吐き気や食欲低下
軽症であれば、食事制限や抗菌薬などによる外来治療で改善することがあります。
一方で、炎症が強い場合や、膿がたまる「膿瘍」、腸に穴があく「穿孔」、腹膜炎などを起こした場合には、入院治療や外科的治療が必要になることもあります。
そのため、下腹部痛に発熱を伴う場合は、自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関で診察を受けることが大切です。
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【治療】
今回は早期に発見できたため、軽症であったため入院は不要と判断し、外来での治療を開始しました。
-
抗生剤治療
点滴と内服薬で炎症を抑えました。 -
食事制限
憩室部分に便による圧がかからないように、ゼリー・プリン・水分などの流動食に限定。 -
栄養補給
抗生剤と併せて栄養剤の点滴も実施。
【経過】
翌日の再診では、腹痛はだいぶ改善しており、血液検査での炎症反応も低下していました。
このままの外来治療で憩室炎の改善が見込めると判断し、
- 食事:お粥やうどんなどの柔らかいもの
- 抗生剤:内服に切り替え
とし、4日後に再診としました。
再診時には腹痛の症状はすっかりなくなっており、血液検査・エコーの所見とも改善しており、憩室炎の治療は終了となりました。
症状が落ち着いた後に大腸カメラを検討する理由
大腸憩室炎の炎症が強い時期には、大腸カメラによって腸に負担がかかる可能性があるため、通常は急性期に無理に行うことは多くありません。
一方で、症状が落ち着いた後には、大腸カメラで憩室の場所や数、大腸ポリープ・大腸がんなど他の病気が隠れていないかを確認することがあります。
特に、初めて大腸憩室炎を指摘された方、最近大腸カメラを受けていない方、血便・便が細い・体重減少・貧血などを伴う方では、炎症が落ち着いた後の精密検査が重要です。
当院では、腹痛や発熱がある時期は血液検査や腹部エコー検査で炎症の状態を確認し、症状が落ち着いた段階で必要に応じて大腸カメラを行うこととしており、今回の患者さんも以前に大腸カメラを受けたとのことでしたが、数年以上経過していたため後日大腸カメラを行いました。
大腸カメラ(内視鏡について)はこちらからご確認頂けます
院長からのコメント
今回は早期受診・早期治療で悪化せずに外来通院で完治することが出来ました。
このように憩室炎は早期に治療を開始することが重要ですので、当院では大腸カメラで憩室を指摘された方や憩室炎の既往がある方には、腹痛や発熱などの症状があるときにはすぐに来院してもらうようにお伝えしております。
ただ、憩室炎は悪化すると穿孔といって腸が破れてしまい腹膜炎という重篤な状態に陥り緊急手術になったりするケースもあるので、炎症が強い場合や腹痛が強い場合には入院して慎重に経過を見る必要があります。
特に次のような症状がある場合は、早めに消化器内科を受診してください。
大腸憩室炎で早めに受診した方がよいサイン
- 下腹部の痛みが半日〜1日以上続いている
- 37℃台以上の発熱を伴っている
- 歩く、咳をする、体を動かすとお腹に響く
- お腹を押すと強く痛む
- 吐き気・嘔吐がある
- 血便や下血がある
- 過去に大腸カメラで「憩室がある」と言われたことがある
- 抗がん剤・ステロイド・免疫抑制薬などを使用している
痛みが強い場合、発熱が続く場合、食事や水分が取れない場合は、自己判断で様子を見すぎず、早めの診察が大切です。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
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よくある質問
Q. 大腸憩室炎とはどのような病気ですか?
大腸憩室炎とは、大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみである「憩室」に、便や細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。 憩室があるだけでは症状がないこともありますが、炎症が起こると腹痛や発熱、押すと痛い感じなどが出ることがあります。
Q. 下腹部痛と発熱がある場合、大腸憩室炎の可能性はありますか?
はい、可能性があります。 とくに左右どちらかの下腹部痛が続き、発熱やお腹を押したときの痛みを伴う場合、大腸憩室炎が原因となっていることがあります。 ただし、虫垂炎、感染性腸炎、尿路感染症、婦人科系疾患などでも似た症状が出るため、診察や検査で確認することが大切です。
Q. 大腸憩室炎ではどこが痛くなりますか?
痛みの場所は、憩室がある部位によって異なります。 左側の大腸、特にS状結腸に炎症が起こると左下腹部痛として出ることがあります。 一方で、右側の大腸に炎症が起こると右下腹部痛として出ることもあり、急性虫垂炎との区別が必要になることがあります。
Q. 大腸憩室炎ではどのような検査を行いますか?
症状の経過や痛みの場所を確認したうえで、お腹の診察、血液検査、腹部エコー検査などを行います。 炎症の程度や合併症が疑われる場合には、CT検査が必要になることもあります。 当院では、腹痛や発熱の状態を確認しながら、必要な検査を組み合わせて診断を進めます。
Q. 大腸憩室炎は外来治療で治りますか?
軽症で全身状態が安定している場合には、外来治療で改善することがあります。 食事内容の調整、抗菌薬、整腸剤、必要に応じた痛み止めなどを組み合わせて治療します。 ただし、炎症が強い場合や症状が悪化する場合には、入院治療が必要になることもあります。
Q. 大腸憩室炎で入院が必要になるのはどのような場合ですか?
強い腹痛、高熱、食事や水分が取れない、炎症反応が高い、膿瘍や穿孔が疑われる場合などでは、入院治療が必要になることがあります。 また、免疫を抑える薬を使用している方や基礎疾患がある方では、慎重に経過を見る必要があります。 痛みや発熱が強い場合は、自己判断で様子を見すぎないことが大切です。
Q. 大腸憩室炎のとき、食事はどうすればよいですか?
炎症が強い時期には、腸に負担をかけないように食事内容を調整することがあります。 症状の程度によっては、一時的に消化のよい食事にしたり、食事量を控えたりすることがあります。 ただし、食事制限の程度は症状や検査結果によって異なるため、医師の指示に従うことが大切です。
Q. 市販の痛み止めで様子を見てもよいですか?
下腹部痛に発熱を伴う場合は、単なる腹痛ではなく腸の炎症が起きている可能性があります。 市販薬で一時的に痛みが和らいでも、原因が改善しているとは限りません。 痛みが続く、発熱がある、押すと痛い、歩くと響くといった症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q. 大腸憩室炎は再発することがありますか?
はい、大腸憩室炎は再発することがあります。 一度改善しても、同じような下腹部痛や発熱を繰り返す場合は、再度炎症を起こしている可能性があります。 再発を繰り返す場合や症状が長引く場合には、憩室の状態や他の病気が隠れていないかを確認することが重要です。
Q. 大腸憩室炎の後に大腸カメラは必要ですか?
急性期の炎症が強い時期には、大腸カメラを無理に行わないことが一般的です。 一方で、症状が落ち着いた後に、大腸ポリープや大腸がんなど他の病気が隠れていないか確認するため、大腸カメラを検討することがあります。 とくに、初めて大腸憩室炎を指摘された方、最近大腸カメラを受けていない方、血便・便が細い・貧血・体重減少などを伴う方では、炎症が落ち着いた後の精密検査が大切です。
大腸カメラ検査について詳しくはこちら
まとめ
- 下腹部痛に発熱を伴う場合は、大腸憩室炎の可能性があります。
- 左右どちらかの下腹部が痛む、押すと痛い、歩くと響く場合は注意が必要です。
- 診断には、診察・血液検査・腹部エコー検査などを組み合わせて行います。
- 軽症であれば、抗菌薬や食事調整などで外来治療が可能なこともあります。
- 症状が落ち着いた後に、大腸カメラで他の病気が隠れていないか確認することもあります。
医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
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参考文献
- 日本消化管学会 編:大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026(改訂第2版). 南江堂, 2026.
- Peery AF, Shaukat A, Strate LL. AGA Clinical Practice Update on Medical Management of Colonic Diverticulitis. Gastroenterology. 2021;160(3):906-911.e1.
- American Gastroenterological Association. Medical management of colonic diverticulitis. Clinical Practice Update.
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
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