実際の治療例 【食後にどんどん悪化する胃痛…その裏に潜む胃潰瘍とは?】
「食後になると胃が痛い」「だんだん痛みが強くなってきた」――
このような症状がある場合、単なる胃もたれではなく、胃潰瘍などの病気が隠れていることがあります。
胃潰瘍は放置すると、出血や穿孔(胃に穴が開くこと)につながることもあり、早めに原因を確認することが大切です。
今回は、当院を受診された実際の患者さんの経過をもとに、食後の胃痛が悪化する場合に考える病気、胃潰瘍の検査、治療、ピロリ菌との関係について、専門医の院長がわかりやすく解説します。
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食後の胃痛が悪化するときに考えたい病気
食後の胃痛が一時的ではなく、慢性的に続く場合や、日ごとに強くなっている場合は、胃の粘膜に炎症や潰瘍が起きている可能性があります。
特に、みぞおちの痛み、食欲低下、吐き気、黒い便、痛み止めの服用歴、ピロリ菌を指摘されたことがある方では、胃潰瘍を含めた胃の病気を考える必要があります。
一方で、食後の上腹部痛は胃だけでなく、胆のうや膵臓の病気でも起こることがあります。
そのため、症状の出方だけで自己判断せず、腹部エコーや胃カメラなどを組み合わせて原因を確認することが大切です。
今回の患者さんも、食後の胃痛が徐々に悪化していたため、胃潰瘍だけでなく胆のう・膵臓の病気も考えながら検査を進めました。
▶食後の胃痛が続く方は、まず 胃痛・腹痛の原因 や 胃潰瘍の症状・検査・治療 もあわせてご確認ください。
実際の治療例|50代男性「食後の胃痛が悪化」
【症状】
2週間前から食後に胃痛があり、ここ数日は日ごとに悪化。食事がとれないほどの痛みとなり当院を受診。
【診察】
食後に痛みが強くなること、以前にピロリ菌を指摘されていたものの除菌を行っていなかったことから、第一に胃潰瘍の可能性を考え、
ただし、上腹部痛は胃の病気だけでなく、膵炎や胆のう炎などでも起こることがあります。 そのため、まずは腹部エコー検査を行い、胃や十二指腸、胆のう、膵臓などを観察することとしました。
【検査】
エコー検査では、胆のう・膵臓に異常はなく、胃の壁の肥厚と陥凹を認め、胃潰瘍を疑いました。

引き続き胃カメラを行い、実際に「胃潰瘍」を認め診断が確定しました。

胃潰瘍が疑われる場合は、 胃カメラ検査 で粘膜の状態を直接確認することが重要です。 また、胆のうや膵臓の病気が疑われる場合には、 腹部エコー検査 を組み合わせて確認します。
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胃潰瘍はどのように起こるのか
胃や十二指腸の粘膜は、健康な状態では粘膜の防御機能によって、胃酸で傷つかないように守られています。
しかし、ピロリ菌、痛み止めの薬、胃酸、ストレス、喫煙、加齢、生活習慣の乱れなどが重なると、粘膜を守る力が低下することがあります。 その結果、胃酸が粘膜に直接作用し、粘膜が傷つき、潰瘍ができてしまいます。
【治療】
胃潰瘍の治療は胃酸の分泌過多を抑える制酸剤や粘膜を保護する粘膜保護剤を用います。
今回の治療内容
①制酸薬
PPIと呼ばれる胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌を抑えることで、胃の粘膜の再生力で潰瘍は治癒していきます。
②粘膜保護薬
胃の粘膜の防御機能を高め、潰瘍による胃痛を抑え改善をより早めます。
③食事指導
治療開始直後は、刺激の少ない粥食や消化のよい和食を中心にしていただきました。 胃に負担をかけにくい食事にすることで、痛みの悪化を防ぎながら回復を促します。
【経過】
投薬開始翌日には痛みが軽くなってきており、3日目の再診時には痛みはほぼなくなっていました。
その後、食事は通常食に戻しながら内服を継続し、1か月後の再診時にも大きな問題はない状態でした。
また、今回の患者さんはピロリ菌陽性であったため、胃潰瘍の治療後にピロリ菌の除菌治療も行いました。
無事に除菌が完了し、その後の胃カメラでも潰瘍が改善していることを確認し、治療は終了となりました。

実際の胃カメラの画像です
ただし、ピロリ菌を除菌した後も胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。 そのため、今後も定期的な胃カメラ検査で経過を確認していく方針としました。
院長からのコメント
胃潰瘍はみぞおちの辺りの慢性的な痛みがでることが多く、食後に増強するのも特徴の一つです。
出血を伴う場合は便が黒くなります。
大きな胃潰瘍では、今回のように腹部エコーで異常が疑われることもありますが、最終的な診断には胃カメラが重要です。
胃潰瘍は、悪化すると出血したり、胃に穴が開いたりすることがあります。
また、潰瘍のように見える病変の中に胃がんが隠れていることもあるため、慢性的な胃痛が続く場合は、自己判断せずに検査を受けることが大切です。
食後の胃痛が続いている方、胃痛がだんだん悪化している方、ピロリ菌を指摘されたまま除菌していない方は、お気軽にご相談ください。
胃潰瘍Q&A
Q. 食後の胃痛は胃潰瘍のサインですか?
はい、胃潰瘍で食後に胃痛が出ることがあります。特に、みぞおちの痛みが続く、食後に痛みが強くなる、食欲が落ちる、吐き気がある、黒い便が出るといった場合は注意が必要です。ただし、胃炎、胆石、胆のう炎、膵炎などでも似た症状が出ることがあるため、症状だけで判断せず検査で確認することが大切です。
Q. 胃潰瘍の原因は何ですか?
胃潰瘍の原因としては、ピロリ菌、痛み止めの薬(NSAIDs)、低用量アスピリン、胃酸、ストレス、喫煙、飲酒、生活習慣の乱れなどが関係します。特に、ピロリ菌感染や痛み止めの薬は重要な原因です。原因によって治療や再発予防の方針が変わるため、必要に応じてピロリ菌検査や服薬内容の確認を行います。
Q. 胃潰瘍と胃がんは胃カメラで見分けられますか?
胃カメラでは、潰瘍の形、周囲の粘膜の状態、出血の有無などを直接確認できます。ただし、見た目だけでは判断が難しい場合もあるため、必要に応じて組織を採取する生検を行い、胃がんが隠れていないか確認します。胃潰瘍と診断された場合でも、治療後に改善しているかを胃カメラで確認することが大切です。
Q. 胃潰瘍でも腹部エコーで分かることはありますか?
大きな胃潰瘍では、腹部エコーで胃の壁の厚みや陥凹などから異常が疑われることがあります。ただし、胃潰瘍の確定診断は胃カメラで行います。腹部エコーは、胆石、胆のう炎、膵炎など、食後の上腹部痛を起こす他の病気を確認する目的でも有用です。
Q. 胃潰瘍はどのくらいで治りますか?
適切な薬を使用すれば、痛みなどの症状は数日から1週間程度で軽くなることがあります。ただし、潰瘍そのものが治るまでには数週間かかることが多く、症状が良くなったからといって自己判断で薬を中止しないことが大切です。治療期間は潰瘍の大きさや原因、出血の有無などによって異なります。
Q. ピロリ菌を除菌すれば胃潰瘍は再発しにくくなりますか?
ピロリ菌が原因となっている胃潰瘍では、除菌治療によって再発リスクを下げることが期待できます。ただし、除菌後も胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。ピロリ菌感染歴がある方は、除菌後も定期的な胃カメラで胃の状態を確認することが大切です。
Q. 胃潰瘍の治療中に食事で気をつけることはありますか?
治療開始直後は、刺激の強い食事、辛いもの、脂っこいもの、アルコール、濃いコーヒーなどは控えめにした方がよい場合があります。痛みが強い時期は、お粥、うどん、白身魚、豆腐、卵料理など、消化のよい食事を中心にすると胃への負担を減らしやすくなります。
Q. 痛み止めで胃潰瘍になることはありますか?
はい、痛み止めの薬の一部は胃の粘膜を守る働きを弱め、胃潰瘍の原因になることがあります。特に、NSAIDsと呼ばれる痛み止めや低用量アスピリンを継続している方は注意が必要です。自己判断で薬を中止するのではなく、胃痛がある場合は医師に服薬内容を伝えたうえで相談してください。
Q. 黒い便が出た場合は胃潰瘍の出血ですか?
黒い便は、胃や十二指腸など上部消化管からの出血で起こることがあります。胃潰瘍から出血している可能性もあるため、黒い便、吐血、ふらつき、動悸、冷や汗などがある場合は早めの受診が必要です。出血が疑われる場合は、緊急で胃カメラが必要になることもあります。
Q. 胃潰瘍を放置するとどうなりますか?
軽い胃潰瘍は自然に改善することもありますが、放置すると出血、貧血、穿孔、強い腹痛につながることがあります。また、潰瘍のように見える病変の中に胃がんが隠れている場合もあります。胃痛が続く、食後に悪化する、黒い便が出る、体重が減るといった場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
まとめ
✓ 食後の胃痛が悪化する場合、胃潰瘍・胃炎・胆石・胆のう炎・膵炎などを考えます。
✓ ピロリ菌感染や痛み止めの薬は、胃潰瘍の重要な原因になります。
✓ 胃潰瘍の確定診断には胃カメラが重要です。
✓ 腹部エコーでは、胆のうや膵臓の病気を確認できるほか、大きな胃潰瘍が疑われることもあります。
✓ ピロリ菌陽性の場合は、胃潰瘍治療後の除菌と定期的な胃カメラが大切です。
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
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文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
※1Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16
※2Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer 2019;
※3 日本消化器病学会. 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版). 南江堂, 2020.
※4 Kamada T, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for peptic ulcer disease 2020. J Gastroenterol. 2021.
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