右下腹部の鈍い痛みが1年続く…「過敏性腸症候群」ではなかった|大腸カメラ再検でクローン病が見つかった30代男性の実例
右下腹部が「ズーンと重い」「鈍く痛い」状態が続くと、仕事や生活のストレスもあり、過敏性腸症候群(IBS)と言われることがあります。
ただ、右下腹部は小腸の末端(回腸末端)が近く、ここに炎症が起きるクローン病が“隠れやすい”場所でもあります。
実際に、他院で大腸カメラを受け「異常なし」と言われたものの、症状が改善せず、当院で大腸カメラを再検したことで、回腸末端の炎症→生検でクローン病と診断に至ったケースがありました。
本記事では右下腹部痛と関係する可能性のある疾患や、受診のタイミングについて、消化器専門医の東海林院長がわかりやすくお伝えします。
同様の症状でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
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実際の治療例|30代男性「右下腹部の鈍い痛みが1年続く」
【症状】
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右下腹部の鈍痛が約1年続く
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他院で大腸内視鏡:異常なし
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IBSとして投薬も改善なく、当院を受診
【診察】
まず「痛みの部位」「便通(下痢/便秘)」「発熱」「体重減少」「血便」「市販の痛み止め(NSAIDs)」「家族歴」「肛門症状(痔ろう等)」を確認し、
以下の病気の可能性を考えました。
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クローン病(回腸末端〜大腸)
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感染性腸炎/回腸末端炎(例:エルシニア等)
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虫垂炎(慢性化を含む)
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NSAIDs関連小腸炎
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腸結核、腸型ベーチェット病 など(鑑別が必要)
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尿管結石、鼠径ヘルニア、筋肉由来の痛み など
正しく状態を把握し、治療方針を立てるためご本人と相談し再度大腸カメラ(内視鏡検査)を行いました。
【実際の内視鏡画像】
大腸の一番奥(回盲部)を越えた先の回腸末端に炎症所見を認めました(矢印部分)。
炎症部位を生検し、結果も踏まえてクローン病と診断。
右下腹部痛がある場合は、大腸カメラの際には大腸の奥の小腸側の回腸末端(小腸の出口)まで観察することが推奨されます。
前医ではこの部分の観察を行っておらず、病変が見逃されてしまった状態でした。
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クローン病とは
クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こりうる、慢性的な炎症性腸疾患(IBD)の一つです。
特に多いのは、小腸の末端(回腸末端)〜大腸の入口(回盲部)で、この場所がちょうど「右下腹部」にあたるため、右下腹部痛(鈍痛・重い痛み)として出てくることがあります。
なぜ起こるの?
原因は1つではなく、
体質(遺伝的要因)+腸内細菌のバランス+免疫反応+環境要因が組み合わさって発症すると考えられています。
ストレス“だけ”が原因で発症する病気ではありませんが、症状が強くなるきっかけになったり、体調に影響することはあります。
どんな症状が出る?
クローン病というと「下痢」をイメージされますが、実際には症状の出方に幅があります。
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腹痛(特に右下腹部)
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下痢、軟便(ない場合もあります)
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微熱、だるさ
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体重減少、食欲低下
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貧血(ふらつき・息切れ)
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肛門の腫れ・痛み(痔ろう、裂肛など)
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口内炎、関節痛、皮膚症状など“腸以外”の症状が出ることも
今回のように、痛みが中心で「鈍痛が続く」タイプだと、IBS(過敏性腸症候群)や筋肉痛と見分けがつきにくく、見逃されることがあります。
クローン病の「見逃しやすいポイント」
クローン病は、炎症が「とびとび」に起きたり、腸の奥(小腸)に限局することがあるため、検査の見方が重要です。
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大腸カメラで大腸は正常でも、回腸末端に炎症があることがある
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そのため、疑う場合は回腸末端までの観察+生検が診断の要になります
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さらに、小腸全体に病変があるケースもあるため、小腸造影やMRI/CT(エンテログラフィ)などの全小腸評価が重要になります
放置するとどうなる?
炎症が長く続くと、腸が狭くなる(狭窄)・腸に穴が開きかける(瘻孔)などの合併症につながることがあるため、早めに診断して治療方針を立てることが大切です。
【治療】
クローン病は小腸に広く病変があることもあるため、小腸造影・MRI/CT(エンテログラフィ)・カプセル内視鏡等で範囲や合併症(狭窄・瘻孔)を確認します。
今回のケースは、小腸型のクローン病のため全小腸検査と専門治療が必要と判断し、対応可能な高次医療機関へご紹介し治療継続となりました。
院長からのコメント
右下腹部の痛みが長引く方で、「一度大腸カメラを受けたから大丈夫」と思っていても、回腸末端(小腸の入口)まで十分に見えていないと、原因にたどり着けないことがあります。
クローン病の評価では、回腸末端までの内視鏡観察と生検が診断の要になります。
「IBSと言われたけれど良くならない」「右下腹部だけずっと重い」——
その場合は、大腸カメラの再検査が診断につながることがあります。
症状でお困りの方はお力になれますので是非ご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問
Q1. 右下腹部の鈍痛が何か月も続くのは普通ですか?
A. 体質のこともありますが、炎症性腸疾患などが隠れることがあります。長引く場合は評価をおすすめします。
Q2. 大腸カメラで異常なしならクローン病は否定できますか?
A. 否定できません。クローン病では回腸末端までの観察+生検が重要です。
Q3. IBS(過敏性腸症候群)とクローン病は何が違いますか?
A. 右下腹部痛などの同様の症状が出ることはありますが、IBSは主に機能(動きや過敏)で、クローン病は炎症が起こる病気です。治療も検査も異なります。
Q4. 下痢がなくてもクローン病はありますか?
A. あります。腹痛中心のこともあり、場所によって症状が変わります。
Q5. 右下腹部痛は虫垂炎では?
A. 虫垂炎も候補ですが、慢性的に続く場合は別の原因も検討します。
Q6. どんな検査が必要ですか?
A. まずは大腸カメラで回腸末端まで確認+生検。必要に応じて小腸造影やMRI/CTなどで全小腸評価をします。
Q7. 痛み止め(NSAIDs)を飲んでいます。関係ありますか?
A. NSAIDsは小腸炎の原因になることがあり、右下腹部痛を引き起こすことはあります。
Q8. クローン病は遺伝しますか?
A. 遺伝だけで決まる病気ではありません。環境因子・免疫反応などが複雑に関与するとされています。
Q9. 受診を急いだほうがいい症状は?
A. 発熱、血便、体重減少、強い腹痛、嘔吐、腹部膨満(ガスも出ない)などがあれば早めに受診してください。
Q10. 池袋上田胃腸クリニックで治療までできますか?
A. 初期評価(診察・血液検査・エコー・大腸カメラ)を行い、クローン病が疑われれば小腸検査が可能な高次医療機関への紹介を含め最適な方針をご提案します。
まとめ
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右下腹部の鈍痛が続く場合、IBSだけでなくクローン病が隠れることがあります
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診断のカギは、大腸カメラで回腸末端まで観察し、生検することです。
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クローン病は小腸全体評価が必要になりやすく、小腸造影やMRI/CTなどを組み合わせます
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「異常なし」で終わらず、症状が続くなら大腸カメラの再検が重要です
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参考文献
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American College of Gastroenterology (ACG). ACG Clinical Guideline: Management of Crohn’s Disease in Adults(疑い例では回腸末端を含む内視鏡+生検を推奨)
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Maaser C, et al. ECCO-ESGAR Guideline for Diagnostic Assessment in IBD (2019)(回腸末端を含む回盲部までの内視鏡評価の重要性)
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難病情報センター. クローン病(指定難病96)(診断に大腸内視鏡・小腸造影・MRI/CT/超音波等を用いる)
医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
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文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
