【要注意】食後の激しい腹痛と下痢…原因は“虚血性腸炎”?実際の診断例を解説
「急激に起こったお腹がギューッと締めつけられるような痛み」
痛みがちょっとよくなってきたからと様子を見てしまう方も多いのですが、食後に起こる強い腹痛や下痢は、腸の血流が一時的に途絶える『虚血性腸炎』の初期サインのことがあります。
放っておくと炎症が広がり、重症化することもあるため、軽くなってきた場合でも痛みや下痢が続く場合は早めの受診が大切です。
この記事では、食後の激しい腹痛と下痢で受診された方の実例をもとに、虚血性腸炎の症状、他の病気との見分け方、必要な検査、治療、受診の目安を専門医の院長がわかりやすく解説します。
急激な腹痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
食後の強い腹痛・下痢でお困りの方へ
池袋上田胃腸クリニックでは、腹痛・下痢・血便などの消化器症状に対して、診察・血液検査・腹部エコー・内視鏡検査などを組み合わせて原因を確認します。
同じ「腹痛」「下痢」でも、原因によって必要な治療は異なります。症状が強い場合や血便を伴う場合は、自己判断せずご相談ください。
食後の激しい腹痛と下痢で考える主な原因
食後に強い腹痛や下痢が起こると、「食あたり」「急性胃腸炎」と考えがちですが、原因はそれだけではありません。
特に、突然の強い腹痛、冷や汗、下痢、血便、翌日まで残る腹痛がある場合は、虚血性腸炎を含めて確認する必要があります。
| 考えられる病気 | 主な特徴 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 虚血性腸炎 | 突然の強い腹痛、下痢、血便。左下腹部痛が多い。 | 冷や汗・血便・翌日まで痛みが残る場合は受診。 |
| 感染性腸炎 | 発熱、吐き気、嘔吐、水下痢。食事内容や周囲の流行が関係することも。 | 高熱、脱水、血便、強い腹痛がある場合は受診。 |
| 過敏性腸症候群 | 食後に腹痛や便意が出やすく、慢性的に繰り返すことが多い。 | 血便、体重減少、発熱がある場合は別疾患の確認が必要。 |
| 憩室炎 | 局所的な腹痛や発熱が目立つ。下痢よりも痛みが中心のこともある。 | 発熱や強い腹痛が続く場合は受診。 |
| 大腸がん・大腸炎 | 血便、便通異常、腹痛、体重減少などが続くことがある。 | 血便や症状の持続がある場合は大腸カメラを検討。 |
▶急な下痢や発熱、腹痛が目立つ場合は、感染性腸炎の症状・原因・治療もご覧ください。
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎とは、大腸の血流が一時的に悪くなり、腸の粘膜に炎症やむくみが起こる病気です【1】【2】。
大腸の一部に十分な血液が届かなくなることで、腸の粘膜が傷つき、腹痛・下痢・血便などの症状が出ます。
高齢の方に多い病気というイメージがありますが、便秘・脱水・ストレス・急な血圧変動などが重なると、若年から中年世代でも起こることがあります【3】。
虚血性腸炎でみられやすい症状
- 突然の強い腹痛
- 冷や汗を伴うほどの腹痛
- 下痢
- 血便、または便に血が混じる
- 左下腹部の痛み
- 痛みが少し落ち着いたあとも鈍い痛みが残る
- 便意が何度も起こる感じ
虚血性大腸炎は腹痛・下痢・下血で発症することが多く、夕食後から夜間にかけて発症した例が多いとされています【3】。
虚血性腸炎が起こりやすい背景
| 背景 | 理由 |
|---|---|
| 便秘 | 腸管内圧が上がり、大腸の血流が悪くなることがあります。 |
| 脱水 | 血液の流れが悪くなり、腸の血流低下につながることがあります。 |
| 動脈硬化 | 血管が硬くなり、腸への血流が低下しやすくなります。 |
| 高血圧・糖尿病 | 血管障害の背景となり、虚血のリスクに関係します。 |
| ストレス・急な血圧変動 | 自律神経や血流変化が関係することがあります。 |
▶虚血性腸炎という病気そのものについて詳しく知りたい方は、虚血性腸炎の症状・原因・治療法もあわせてご覧ください。
食後に虚血性腸炎が起こることはありますか?
虚血性腸炎は、食事そのものが直接の原因というよりも、便秘・脱水・血流低下・腸管内圧の上昇などが重なることで起こります。
ただし、食後しばらくしてから腸が動き出すタイミングで、急に腹痛や下痢が出ることがあります。特に夕食後から夜間にかけて、急な腹痛・下痢・血便で発症するケースもあります【3】。
そのため、食後の症状だからといって「食あたり」と決めつけず、痛みの強さ、冷や汗、血便の有無、翌日まで痛みが残るかを確認することが大切です。
実際の治療例|40代女性「下腹部の激痛と下痢」
【症状】
夕食後、3時間ほどして急に冷や汗が出るほどの腹痛と下痢が数回。
夜中に激しい痛みがようやく落ち着いたものの、翌朝になっても下腹部に鈍い痛みが続くため、当院を受診。
【診察】
診察では以下の疾患を鑑別診断として挙げました。
-
急性胃腸炎(感染性腸炎)
-
虚血性腸炎
-
憩室炎
- 過敏性腸症候群
状態を見極めて治療方針を立てるため、腹部エコーと血液検査を行いました。
【検査】
・血液検査:炎症反応の上昇
・腹部エコー:下行結腸の腸管壁の浮腫・肥厚を確認。
症状と合わせて、虚血性腸炎と診断しました。
■実際のエコー画像■
下行結腸が浮腫を起こし、腸管壁が腫れています(矢印部分)。虚血性腸炎に合致する所見です
【治療と経過】
虚血性腸炎は軽症例の場合は腸を安静に保つため、食事療法+点滴治療の外来治療で改善します。
中等症以上では入院のうえ、抗生剤や水分補給を行うこともあります。
再発防止のためには、便秘の予防・水分摂取・動脈硬化の管理が重要です。
今回は幸いにも軽症であり、外来治療で改善しました。
もともと便秘症とのことであり、再発予防のため便通コントロールを行っています。
▶虚血性腸炎という病気そのものについて詳しく知りたい方は、虚血性腸炎の症状・原因・治療法もあわせてご覧ください。
こんなときは早めに受診してください
食後の腹痛や下痢は一時的な不調のこともありますが、次のような場合は早めの受診をおすすめします。
- 急に動けないほどの強い腹痛がある
- 冷や汗を伴うほど痛みが強い
- 血便が出た、または便に血が混じる
- 症状が少し軽くなっても翌日まで痛みが残る
- 発熱、脱水、ふらつきがある
- 便秘傾向が強い、動脈硬化や高血圧、糖尿病がある
虚血性腸炎は軽症で自然に改善することもありますが、似た症状を示す病気も多く、重症例では入院治療が必要になることもあります。
症状が強いときや血便を伴うときは、様子を見すぎずにご相談ください。
▶腹痛全体の原因や受診の目安は、胃痛・腹痛の原因と治療でも解説しています。
院長からのコメント
食後の腹痛や下痢は、日常でも比較的よくみられる症状です。そのため「少し様子を見れば治るだろう」と考えられる方も少なくありません。
しかし、冷や汗が出るほどの強い腹痛、血便、翌日まで残る下腹部痛がある場合は、虚血性腸炎や憩室炎、大腸炎などの病気が隠れていることがあります。
特に虚血性腸炎は、症状が一度軽くなっても腸の炎症が残っている場合があります。腹部エコーや血液検査で早めに確認することで、必要な治療や食事管理につなげることができます。
「食あたりだと思っていたけれど、いつもと違う」「痛みが強すぎる」「血便がある」という場合は、自己判断せずに消化器内科へご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問(FAQ)
Q. 食後すぐに腹痛や下痢が起こるのは、必ず虚血性腸炎ですか?
A. 必ずしも虚血性腸炎とは限りません。感染性腸炎、過敏性腸症候群、憩室炎、胆のう・膵臓の病気、大腸炎などでも食後の腹痛や下痢が起こることがあります。冷や汗を伴う強い腹痛、血便、翌日まで続く痛みがある場合は、早めに受診して原因を確認することが大切です。
Q. 虚血性腸炎はどのような症状で始まりますか?
A. 突然の強い腹痛、下痢、血便で始まることが多いです。特に左下腹部の痛みや、冷や汗を伴うほどの腹痛がみられることがあります。痛みが一度軽くなっても、下腹部の違和感や鈍痛が数日残ることがあります。
Q. 虚血性腸炎と感染性腸炎はどう違いますか?
A. 感染性腸炎は細菌やウイルスなどによる感染が原因で、発熱、吐き気、嘔吐、水下痢を伴うことがあります。一方、虚血性腸炎は大腸の血流低下が原因で、突然の強い腹痛のあとに下痢や血便が出ることがあります。ただし症状だけで完全に見分けることは難しいため、診察や検査で判断します。
Q. 虚血性腸炎は若い人でも起こりますか?
A. 起こることがあります。虚血性腸炎は高齢の方に多い病気ですが、便秘、脱水、ストレス、急な血圧変動などが重なると若い方や中年世代でも発症することがあります。実際に、便秘などの腸管側の要因が関係する軽症例も報告されています。
Q. 血便が出た場合は必ず受診した方がよいですか?
A. はい。血便は虚血性腸炎だけでなく、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープ、大腸がん、痔などでも起こります。特に腹痛や下痢を伴う血便、繰り返す血便、便通異常を伴う血便は、早めに消化器内科で相談してください。
Q. 虚血性腸炎は自然に治りますか?
A. 軽症の場合は、腸を休ませる食事管理や水分補給などで改善することがあります。ただし、重症例では入院治療や手術が必要になる場合もあります。症状が強い場合、血便がある場合、痛みが続く場合は、自然に治ると決めつけず受診してください。
Q. 虚血性腸炎ではどのような検査をしますか?
A. 症状に応じて、腹部エコー、血液検査、CT検査、大腸カメラなどを行います。腹部エコーでは腸管壁のむくみや肥厚を確認できることがあります。血便が続く場合や大腸がん・炎症性腸疾患を除外する必要がある場合は、大腸カメラを検討します。
Q. 虚血性腸炎のとき、食事はどうすればよいですか?
A. 症状が強い急性期には、腸を休ませるために食事制限が必要になることがあります。改善してきたら、おかゆ、うどん、スープなど消化のよいものから再開します。脂っこい食事、アルコール、刺激物はしばらく控えることが多いです。具体的な食事内容は症状の程度により異なるため、医師の指示に従ってください。
Q. 虚血性腸炎は再発しますか?
A. 再発することがあります。便秘、脱水、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの背景がある場合は、再発予防として便通管理、水分摂取、生活習慣の見直し、基礎疾患の管理が大切です。
Q. どのタイミングで救急相談や早めの受診を考えるべきですか?
A. 動けないほどの強い腹痛、冷や汗を伴う痛み、血便、発熱、ふらつき、水分が取れない、痛みが増している、翌日まで強い痛みが続く場合は、早めの受診や救急相談を検討してください。特に高齢の方や基礎疾患がある方は、重症化を避けるためにも早めの判断が大切です。
まとめ
食後の激しい腹痛や下痢は、感染性腸炎だけでなく、虚血性腸炎が原因のこともあります。
- 食後の強い腹痛・下痢は虚血性腸炎でも起こることがある
- 虚血性腸炎では、突然の腹痛、下痢、血便がみられやすい
- 冷や汗を伴う痛み、翌日まで残る痛み、血便がある場合は注意が必要
- 腹部エコーや血液検査で、腸の炎症や全身状態を確認することが大切
- 再発予防には便秘対策、水分摂取、基礎疾患の管理が重要
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
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参考文献
- Mayo Clinic. Ischemic colitis - Symptoms and causes.
- Mayo Clinic. Ischemic colitis - Diagnosis and treatment.
- 丸山茂雄ほか. 虚血性大腸炎の臨床的検討. 日本消化器病学会雑誌. 2018;115(7):643-651.
- Cleveland Clinic. Ischemic Colitis: Symptoms & Treatment.
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド. 虚血性大腸炎.
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
