【要注意】朝から血便で便器が真っ赤…「虚血性腸炎」だった70代女性の実例|当日大腸カメラで診断
「朝トイレに行ったら、便器が赤くなるほどの血が…」
血便は痔が原因のことも多い一方、大腸の炎症や出血性の病気が隠れていることがあります。
特に高齢の方では、虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)が原因になることも珍しくありません。
虚血性腸炎は「腹痛・下痢・血便」が典型ですが、血便だけで始まるケースもあります。
この記事では、70代女性の実例をもとに「血便の見分け方」「受診のタイミング」「必要な検査」「治療」「当院での対応(当日大腸カメラが難しい場合の代替検査)」まで、患者さん向けに消化器専門医の東海林院長がわかりやすくお伝えします。
血便でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
血便でお困りの方へ
池袋上田胃腸クリニックでは、血便・下血・便潜血陽性・腹痛を伴う血便などのご相談を受け付けています。症状や全身状態に応じて、診察・血液検査・腹部エコー・大腸カメラを組み合わせて原因を確認します。
同様の症状でお悩みの方はぜひご相談ください。
朝から血便が出るときに考える主な原因
朝の排便時に血便が出る場合、出血の色・量・回数・腹痛の有無・下痢や発熱の有無によって考える病気が変わります。
ただし、見た目だけで原因を断定することはできません。特に、便器が赤く染まるほどの血便や、何度も繰り返す血便では、消化器内科での評価が重要です。
痔・裂肛
排便時や排便後に鮮血が出ることがあります。紙につく程度から便器が赤くなる場合まであります。
大腸憩室出血
腹痛が少ないまま、突然まとまった量の血便が出ることがあります。
虚血性腸炎
大腸の血流低下により、腹痛・下痢・血便が起こります。血便が目立つこともあります【1】【2】。
感染性腸炎
腹痛・下痢・発熱を伴うことがあります。食事歴や周囲の感染状況も確認します。
潰瘍性大腸炎など
血便や粘液便が続く場合、炎症性腸疾患を考えることがあります。
大腸ポリープ・大腸がん
少量の出血や便潜血陽性で見つかることもあります。年齢や症状に応じた検査が必要です。
▶血便について詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
関連ページ:血便の原因と治療について
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎とは、何らかのきっかけで大腸の血流が一時的に悪くなり、大腸の粘膜に炎症や傷が起こる病気です【1】【2】。
大腸の粘膜は血流が低下すると酸素不足になり、炎症・むくみ・びらん・出血を起こします。その結果、腹痛、下痢、血便などの症状が出ます。
典型的には、便秘がちな高齢女性に多いとされています【2】【5】。便秘やいきみ、脱水、血圧低下、動脈硬化の背景、一部の薬剤などが関係することがあります。
虚血性腸炎は、多くの場合、腸を休ませる保存的治療で改善します【1】【3】。ただし、強い腹痛、発熱、出血が止まらない、全身状態が悪い場合には、重症度の評価が必要です。
関連ページ:虚血性腸炎とは?症状・原因・治療法と注意点
実際の治療例|70代女性「朝から真っ赤な血便」
【症状】
朝6時頃、便意で目が覚めて排便。確認すると血で便器が赤くなるほどの出血があり、その後も数回の血便が続いたため来院されました。
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便器が赤く染まるレベルの血便
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繰り返す血便
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腹痛や下痢が強くない(=「血便のみ」タイプ)
【診察】
血便を見たとき、まず大事なのは「出血の量・色・回数」「腹痛・発熱・下痢の有無」「薬(抗血栓薬など)」「既往歴」を確認することです。
血便で考える主な鑑別:
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痔(いぼ痔・切れ痔)
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大腸憩室出血(痛みが少なく突然大量に出ることも)
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虚血性腸炎
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感染性腸炎(発熱・下痢を伴いやすい)
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炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)
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大腸ポリープ/大腸がん
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薬剤性(NSAIDsなど)
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血管病変(angiodysplasia など)
「痔っぽいから様子見」で済むこともありますが、初めての血便、量が多い、繰り返す、高齢の場合は、大腸の評価が重要になります。
正しく状態を把握し、治療方針を立てるため大腸カメラ(内視鏡検査)を行いました。
【実際の大腸内視鏡画像】
横行結腸からS状結腸にかけて片側に偏った炎症像を認め(矢印部分)、症状と合わせて虚血性腸炎と診断しました。
関連ページ
▶無痛大腸カメラ|実際の検査の流れや鎮静剤とオリジナル低痛挿入による無痛大腸カメラの詳細がご確認いただけます
【治療】
虚血性腸炎は、軽症から中等症で全身状態が安定している場合、腸を休ませる保存的治療で改善することが多い病気です【1】【3】。
今回の方も、重症所見はなく、以下の治療を行いました。
- 食事内容の調整
- 腸への負担を減らす生活指導
- 症状に応じた投薬
- 出血や腹痛の経過確認
治療後、症状は3日ほどで改善し、経過良好のため終診となりました。
血便が出たときの受診の目安
血便が出た場合、出血が少量で一度だけであっても、初めての症状であれば一度相談することをおすすめします。特に以下に当てはまる場合は、早めの受診が必要です。
- 便器が赤くなるほどの出血がある
- 血便を何度も繰り返している
- 腹痛・下痢・発熱を伴う
- めまい・ふらつき・動悸がある
- 黒い便が出た
- 抗血栓薬を内服している
- 40歳以上で大腸カメラを受けたことがない
- 大腸ポリープや大腸がんの既往・家族歴がある
出血が止まらない、強い腹痛がある、冷や汗やふらつきがある場合は、夜間であっても救急受診を含めて早めに医療機関へご相談ください。
院長コメント
血便は「痔だろう」と思われやすい症状ですが、年齢、出血の量、繰り返すかどうか、腹痛や下痢を伴うかによって、考える病気や必要な検査は変わります。
今回の症例では、腹痛や下痢が強くない一方で、便器が赤くなるほどの血便が複数回続いていました。このような場合、痔だけでなく、虚血性腸炎、大腸憩室出血、大腸炎、大腸ポリープ・大腸がんなどを考えて診察を進める必要があります。
虚血性腸炎は比較的よく遭遇する病気で、多くは保存的治療で改善します。しかし、出血が多い場合や他の病気との鑑別が必要な場合には、適切なタイミングで検査を行うことが大切です。
当院では、患者さんの状態に応じて、大腸カメラ、腹部エコー、血液検査などを組み合わせ、できるだけ不安を少なく原因の確認につなげるよう努めています。
血便でお困りの方は、我慢せずご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問
Q1. 血便があっても腹痛がなければ様子を見て大丈夫ですか?
A. 腹痛がない血便でも、痔とは限りません。大腸憩室出血や大腸ポリープ、大腸がんなどでも腹痛が目立たないことがあります。初めての血便、量が多い血便、繰り返す血便では一度受診をおすすめします。
Q2. 便器が赤くなるほどの血便は痔ですか?
A. 痔でも出血することはありますが、便器が赤くなるほどの出血では、大腸憩室出血、虚血性腸炎、感染性腸炎、炎症性腸疾患なども考えます。見た目だけで判断せず、消化器内科でご相談ください。
Q3. 虚血性腸炎はどのような病気ですか?
A. 大腸への血流が一時的に悪くなり、大腸粘膜に炎症や出血が起こる病気です。腹痛、下痢、血便が典型的ですが、症状の出方には個人差があります【1】【2】。
Q4. 虚血性腸炎は自然に治りますか?
A. 軽症の場合は、食事調整や腸を休める治療などの保存的治療で改善することが多いです【1】【3】。ただし、出血量が多い、強い腹痛や発熱がある、全身状態が悪い場合は重症度の確認が必要です。
Q5. 虚血性腸炎は高齢者に多いですか?
A. 一般的には高齢の方に多く、特に便秘がちな高齢女性でみられやすいとされています【2】【5】。ただし、若い方でも脱水、便秘、薬剤、基礎疾患などを背景に起こることがあります。
Q6. 血便が出たら必ず大腸カメラが必要ですか?
A. 必ず全員に必要というわけではありませんが、血便の量が多い、繰り返す、40歳以上、便潜血陽性、大腸カメラ歴がない、腹痛や下痢を伴う場合には、大腸カメラを検討します。大腸カメラは大腸粘膜を直接確認でき、診断に役立ちます【3】。
Q7. 大腸カメラが当日にできない場合はどうなりますか?
A. 前処置や予約状況、全身状態によって当日の大腸カメラが難しい場合があります。その場合は、診察、血液検査、腹部エコーなどで緊急性を評価し、必要に応じて最短で大腸カメラや追加検査につなげます。
Q8. 虚血性腸炎と大腸がんは関係ありますか?
A. 虚血性腸炎と大腸がんは別の病気です。ただし、どちらも血便の原因になり得るため、症状だけで見分けることはできません。必要に応じて大腸カメラで確認します。
Q9. 抗血栓薬を飲んでいて血便が出た場合はどうすればよいですか?
A. 血液をサラサラにする薬を飲んでいる方の血便では、出血量や全身状態の確認が重要です。自己判断で薬を中止せず、まず処方元または医療機関に相談してください。出血量が多い場合やふらつきがある場合は早めの受診が必要です。
Q10. 血便が一度だけで止まった場合も受診した方がよいですか?
A. 少量で一度だけの場合でも、初めての血便、40歳以上、大腸カメラを受けたことがない、便潜血陽性歴がある、血便を繰り返す場合には相談をおすすめします。大腸ポリープや大腸がんが少量の出血で見つかることもあります。
まとめ
朝から便器が赤くなるほどの血便が出た場合、痔だけでなく、大腸の炎症や出血性の病気を考える必要があります。今回の症例では、当院で大腸カメラを行い、虚血性腸炎と診断しました。
- 血便は、痔だけでなく虚血性腸炎・憩室出血・大腸炎・大腸がんなどでも起こります。
- 虚血性腸炎は、大腸の血流低下によって起こる病気です。
- 典型的には腹痛・下痢・血便ですが、血便が目立つケースもあります。
- 便器が赤くなるほどの血便、繰り返す血便、高齢の方の血便では早めの受診が大切です。
- 診断には、診察・血液検査・腹部エコー・大腸カメラなどを症状に応じて組み合わせます。
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「検査はつらい、怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、“苦痛の少ない内視鏡検査(無痛胃カメラ・無痛大腸カメラ)” を心がけています。
初めての方や検査に不安がある方でも、「ここで受けてよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、池袋上田胃腸クリニックまでお気軽にご相談ください。
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文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
参考文献
- Mayo Clinic. Ischemic colitis - Symptoms and causes. Nov. 07, 2024.
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド. 虚血性大腸炎.
- Mayo Clinic. Ischemic colitis - Diagnosis and treatment. Nov. 07, 2024.
- Trotter JM, Hunt L, Peter MB. Ischaemic colitis. BMJ. 2016;355:i6600.
- 穂苅量太, 東山正明, 成松和幸. 虚血性大腸炎. 臨牀消化器内科. 2022;37(2):167-174.
