【実際の治療例】急な腹痛・下痢・発熱…原因は病原性大腸菌?|実例でわかる受診の目安
「2日前から急にお腹が痛い」「下痢と熱も出てきた」
このような症状が続くと、「家で様子を見るのか」、「病院を受診した方がいいのか」、判断が難しいものです。
今回は、腹痛・下痢・発熱が続き、病原性大腸菌(下痢原性大腸菌)による腸炎と診断された実例をもとに受診のタイミングや検査・治療の流れを専門医の院長が分かりやすく解説します。
腹痛・下痢・発熱でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
池袋上田胃腸クリニックでは、急な腹痛・下痢・発熱などの胃腸症状に対して、診察・血液検査・腹部エコーなどを組み合わせて原因を調べています。
「食あたりだと思うけれど症状が強い」「熱がある」「水分が取れない」「血便がある」といった場合は、早めにご相談ください。
腹痛・下痢・発熱を起こす主な原因
急な腹痛・下痢・発熱がある場合、主に次のような病気を考えます。
| 考えられる原因 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 感染性腸炎 | ウイルスや細菌による腸炎。腹痛、下痢、吐き気、発熱を起こします。 | 症状が強い場合は細菌性腸炎の可能性があります。 |
| 病原性大腸菌による腸炎 | 水様性下痢、腹痛、発熱、血便などを起こすことがあります。 | 腸管出血性大腸菌では重症化に注意が必要です【1】。 |
| カンピロバクター腸炎 | 鶏肉などをきっかけに発症し、下痢、腹痛、発熱、血便を起こすことがあります。 | 食事歴が診断の手がかりになります。 |
| 虫垂炎 | 右下腹部痛、発熱、吐き気などを起こします。 | 初期は胃腸炎のように見えることがあります。 |
| 虚血性腸炎 | 急な腹痛と下痢、血便を起こすことがあります。 | 便秘傾向の方や中高年で注意が必要です。 |
| 潰瘍性大腸炎・クローン病 | 下痢、血便、腹痛が長く続くことがあります。 | 感染性腸炎と区別が必要です。 |
▶腹痛・下痢・発熱がある方は、感染性腸炎の詳しい解説もあわせてご覧ください。
病原性大腸菌による腸炎について
病原性大腸菌とは、腸に炎症を起こす性質をもった大腸菌の総称です。
通常の大腸菌とは異なり、腸粘膜に炎症を起こす毒素や付着因子を持つ細菌です。
これにより、
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腸の粘膜が傷つく
-
水分吸収が低下し水様性下痢が起こる
-
腸の炎症で腹痛・発熱が出る
といった症状が現れます。
病原性大腸菌はどこから感染する?
感染のきっかけとしては、次のようなものがあります。
- 加熱が不十分な肉
- 生肉を扱った包丁・まな板からの二次汚染
- 汚染された水や食品
- 加熱せずに食べる食品
- 手洗い不足
厚生労働省は、腸管出血性大腸菌の予防として、肉の中心部まで十分に加熱すること、調理器具の使い分け、手洗いを推奨しています【2】【3】。
実際の治療例|20代女性「腹痛・下痢・発熱が一気に悪化」
【症状】
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2日前の夜から腹痛が出現
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翌日:下痢・発熱(38℃前後)
-
自宅で様子を見るも改善せず
-
食欲低下、脱水気味でつらい状態に
感染性腸炎では、これらの症状が短期間で一気に悪化することがよくあります。
【診察】
診察では腹部の圧痛を確認し、次のような疾患を鑑別に挙げました。
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感染性腸炎(ウイルス性・細菌性)
-
虚血性腸炎
-
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
-
盲腸炎(虫垂炎)
正確な診断をつけ治療方針を立てるため、血液検査・腹部エコーで状態を確認しました。
【検査】
① 血液検査
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CRP上昇(炎症反応)
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白血球数増加→ 細菌性腸炎を示唆
② 腹部エコー
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大腸全体の壁の肥厚(炎症像)
→ 細菌性腸炎の典型所見で、病原性大腸菌を疑う所見
■実際のエコー画像■
矢印で挟まれた黒い部分が大腸壁になります。9㎜大と肥厚を認め大腸炎と診断します。
ご本人から数日前にユッケを食べたとのこともあり、検査結果と合わせて病原性大腸菌による感染性腸炎と考えました。
※後日便培養から病原性大腸菌(下痢原性大腸菌)を検出 し、 確定診断となりました。
このようにエコー検査は腸炎の状態や重症度評価にも非常に有用です【1】。
▶腹部エコーでわかる病気については、池袋で受けられるエコー検査のページでも詳しく解説しています。
【治療】
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病原性大腸菌に有効な抗生剤を開始
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脱水改善のための補液
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整腸剤併用
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高タンパク・高脂肪の食事は控えて胃腸を安静に
治療開始後、5日ほどで症状はほぼ改善しました。
ただし、すべての下痢に抗菌薬が必要なわけではありません。特に、腸管出血性大腸菌が疑われる場合は、抗菌薬や下痢止めの使用に注意が必要です【4】。
そのため、自己判断で下痢止めや抗菌薬を使用するのではなく、発熱・血便・強い腹痛・脱水がある場合は医療機関で相談することが大切です。
食事・生活で気をつけること
感染性腸炎の治療中は、腸に負担をかけないことが大切です。
- 水分をこまめに取る
- 脂っこい食事を避ける
- アルコールを控える
- 香辛料など刺激物を避ける
- おかゆ、うどん、スープなど消化のよい食事にする
- 症状が強い間は無理に食べすぎない
また、家族内感染を防ぐために、トイレ後の手洗い、タオルの共有を避ける、便で汚れた場所を適切に清掃することも重要です。
受診の目安(この症状があれば相談を)
次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
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38℃以上の発熱が続く
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水様性下痢が1日3回以上/翌日も続く
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強い腹痛・下痢・発熱がセットで出る
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血便が出る
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脱水(尿が減る・口が乾く・ふらつく)
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市販薬を飲んでも改善しない
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食事や水分が取れない
「ただの食あたり」と思って様子を見ると悪化することがあるため、症状が続くときは早めに医療機関へご相談ください。
院長からのコメント
腹痛・下痢・発熱が急に出た場合、多くの方は「食あたりかな」「胃腸炎かな」と考えます。
もちろん軽症で自然に改善する胃腸炎もありますが、発熱がある、腹痛が強い、脱水がある、血便がある場合は、細菌性腸炎や大腸炎を考えて診察する必要があります。
今回の症例では、血液検査と腹部エコーで腸炎の状態を確認し、便培養で病原性大腸菌が検出されました。
腹部エコーは被ばくがなく、腸の壁の肥厚や炎症の範囲をその場で評価できるため、急な腹痛や下痢の診療でも有用です。
「ただの下痢」と思っていても、検査が必要な腸炎が隠れていることがあります。症状が強いときは、無理に我慢せずご相談ください。
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問(FAQ)
Q1. 細菌性腸炎とウイルス性腸炎の違いは?
A1. 細菌性は症状が強く、発熱・腹痛が出やすい点が特徴です【1】。
Q2. 病原性大腸菌は市販薬で治りますか?
A2. 市販の下痢止めでは逆に悪化の可能性があり、医療機関で処方される抗生剤が必要なことが多いです。
Q3. 感染経路は?
A3. 生肉・加熱不十分な食品・汚染水などが代表です【2】。
Q4. 家族にうつりますか?
A4. 接触やトイレを介した感染が起こることがあります。
Q5. どのくらいで治りますか?
A5. 軽症で3〜5日、症状が強い場合は1週間前後です。
Q6. エコーで腸炎は本当にわかるの?
A6. 腸壁の肥厚や炎症所見が評価でき、非常に有用です【1】。
Q7. 便培養は必要?
A7. 病原性細菌を特定し治療方針を決めるため重要です。
Q8. 食事はどうすれば良い?
A8. 治るまでは刺激物や脂質の多い食事は避け、消化の良いものを。
Q9. 再発しますか?
A9. 基本的にはしませんが、食品管理が不十分だと再感染は起こり得ます。
Q10. 受診の目安は?
A10. 24時間以上続く強い腹痛・発熱・水様下痢は受診を推奨します。
まとめ
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急な腹痛・下痢・発熱は細菌性腸炎の可能性が高い
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血液検査で炎症、エコーで腸の炎症像が確認できる
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病原性大腸菌は便培養で確定
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抗生剤治療で多くは5日ほどで改善
-
強い症状が続くときは早めの受診が大切
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予防には、肉の十分な加熱、手洗い、調理器具の使い分けが重要です。
💡当院は池袋駅から徒歩5分程度でアクセス可能です。お気軽にご相談ください。
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医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
〒1710014
東京都豊島区池袋2丁目66-10
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参考文献
厚生労働省:腸管出血性大腸菌Q&A
厚生労働省:腸管出血性大腸菌による食中毒に注意しましょう
厚生労働省:広報誌「厚生労働」2024年6月号 食事にひそむキケン~おいしく安全に食べるヒント~
Shane AL, et al. IDSA 2017 Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea. Clinical Infectious Diseases. 2017.
MSDマニュアル家庭版:大腸菌(Escherichia coli)感染症
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
