「過敏性腸症候群が治らない」その理由、実は“潰瘍性大腸炎”かもしれません
「過敏性腸症候群(IBS)」と言われて薬を飲んでいるのに、下痢や腹痛がなかなか治らない
――そんな方はいませんか?
症状が似ていても、実は「潰瘍性大腸炎」という慢性の炎症性腸疾患が隠れていることがあります。
今回は、他院でIBSと診断されながら改善しなかった患者さんの実際の治療例を紹介します。
池袋上田胃腸クリニックではWEB予約・電話予約を受け付けています。同様の症状でお悩みの方はぜひご相談ください。
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
症例|20代男性「過敏性腸症候群が治らない」
【症状】
数年前から一日数回の下痢と腹痛があり、近医にて過敏性腸症候群と診断され投薬治療を受けていましたが、症状が改善しないととのことで当院を受診されました。
【診察】
下痢や腹痛はストレス時に悪化するとのことで過敏性腸症候群の症状としても矛盾はありませんでしたが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性的に腸に炎症を起こす炎症性腸疾患も否定はできない症状でした。
前医では検査はせずに症状のみで過敏性腸症候群と診断を受けたとのことで、ご本人と相談し大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い腸の状態を確認してみることとしました。
【検査】
大腸内視鏡行うと大腸全体に広がる炎症を認めました。
生検を行い内視鏡所見と合わせて潰瘍性大腸炎と診断しました。
■実際の大腸カメラの画像■

大腸内視鏡画像です。 大腸粘膜全体に潰瘍性大腸炎と思われるびらん(黄色矢印部分)・炎症によるうっ血(青丸部分)を認めました。
【潰瘍性大腸炎とは?】
潰瘍性大腸炎とは、「体内に侵入したウイルスや細菌などの外的を攻撃する免疫細胞(白血球など)が、大腸粘膜や腸内細菌を敵と誤認して攻撃してしまい、大腸の粘膜に慢性的に炎症を起こす病気」です。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症やびらん・潰瘍が起こる指定難病です。
原因は明確ではありませんが、免疫の異常や腸内環境の乱れ、ストレスなどが関係していると考えられています【1】。
主な症状
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下痢・粘血便
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腹痛
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発熱
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倦怠感
実は根本的な治療法が今のところはない難病の一つですが、炎症自体は薬で抑えることが可能で、適切な治療で長期的なコントロールが可能です。
【治療・経過】
潰瘍性大腸炎に対しての抗炎症薬(5-ASA)による内服治療を行い、と1週間ほどでで下痢・腹痛は著明に改善しました。
状態的には薬で症状が消えた状態=寛解状態となりました。
ただ、先述のように根本的な治療法はなく薬で炎症を抑えているだけであり、この寛解状態を維持するため投薬を継続しています。
(やめると高確率で再燃してしまいます。)
潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群の違い
過敏性腸症候群は「腸に炎症や腫瘍などの異常がないにも関わらず起こる腹痛や便通異常をきたす疾患」です。
ストレスや緊張で悪化しやすいのが特徴ですが、潰瘍性大腸炎も同じように腹痛や便通異常をきたし、かつストレスで増悪することもあり、
症状が合致するからと言って必ずしも過敏性腸症候群とは言えません。
今回のように症状が治らない場合はもちろん、過敏性腸症候群と診断する際にはしっかりと大腸内視鏡などの検査することが重要です。
| 項目 | 潰瘍性大腸炎 | 過敏性腸症候群(IBS) |
|---|---|---|
| 原因 | 免疫異常による炎症 | 自律神経・腸の過敏性 |
| 主な症状 | 下痢・粘血便・発熱 | 下痢・便秘・腹痛 |
| 検査所見 | 大腸内視鏡で炎症・びらんを確認 | 器質的異常はなし |
| 治療法 | 抗炎症薬・免疫調整薬 | 整腸剤・生活改善 |
| 重要ポイント | 検査が必要な「疾患」 | 排除診断で確定する「症候群」 |
見た目の症状が似ていても、原因も治療法もまったく異なります。
「IBSだから大丈夫」と思い込み、検査を受けずに放置すると重症化することもあります。
院長からのコメント
過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎は、初期症状が似ているため混同されがちです。
特に「薬が効かない」「血が混じる」「体重減少」「夜間の下痢」がある場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けることが重要です。
当院では鎮静剤を使用した「眠っている間に終わる内視鏡検査」に対応しています。
当院ではWEB予約・電話予約を受け付けています。症状が続く方は、自己判断せず一度ご相談ください。
📞 お電話でのお問い合わせ:03-5953-5903
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
まとめ
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IBSと思っていても潰瘍性大腸炎などの疾患が隠れていることがある
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大腸内視鏡検査が診断の決め手になる
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早期発見・早期治療で再燃を防ぐことができる
当院の大腸カメラの特徴
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鎮静剤や独自の低痛挿入法による苦しくない無痛内視鏡検査
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高解像度スコープで小さな病変も発見
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土日対応、事前診察は原則不要
- 池袋駅徒歩5分でアクセス良好
お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
よくある質問(FAQ)
Q1. 潰瘍性大腸炎は完治しますか?
A. 完全に治る病気ではありませんが、薬で炎症を抑えることで寛解状態を長く維持できます【2】。
Q2. 過敏性腸症候群(IBS)とどう見分けますか?
A.大腸内視鏡を行って見分けます。 IBSは検査で異常が出ませんが潰瘍性大腸炎は粘膜に炎症を認めます【3】。
Q3. 潰瘍性大腸炎の治療は入院が必要ですか?
A. 軽症~中等症は外来での治療が可能です。重症例のみ入院治療となります。
Q4. どんな薬を使いますか?
A. 主に5-ASA(メサラジン)やステロイド、免疫調整薬、生物学的製剤などが使われます【4】。
Q5. 大腸内視鏡はどれくらいの頻度で必要ですか?
A. 症状が安定していても、1年に1回程度の内視鏡フォローが推奨されています【5】。
医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
〒1710014
東京都豊島区池袋2丁目66-10
上田胃腸クリニック(池袋駅 北口から徒歩5分)
- JR「池袋」北改札 → 左へ → 20b出口から地上へ
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▶お電話での予約・お問い合わせ:03-5953-5903
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参考文献
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日本消化器病学会編. 潰瘍性大腸炎診療ガイドライン 2020.
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Ungaro R, et al. Ulcerative colitis. Lancet. 2017;389(10080):1756–1770.
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Longstreth GF, et al. IBS diagnostic criteria. Gastroenterology. 2016.
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Harbord M, et al. ECCO guidelines on IBD. J Crohns Colitis. 2017.
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国立がん研究センター「炎症性腸疾患のがんサーベイランス指針」.
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- 👉大腸カメラ|実際の検査の流れや鎮静剤とオリジナル低痛挿入による無痛大腸カメラの詳細がご確認いただけます
文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
