「急性胃腸炎」と言われたのに治らない…実は“虚血性腸炎”だった実例|池袋上田胃腸クリニック
「急性胃腸炎」と診断されたのに、なかなか治らない…。
実はその裏に腸の血流障害(虚血性腸炎)が隠れているケースがあります。
今回は、夜間救急で急性胃腸炎と診断されたものの改善せず、翌朝に当院を受診された50代女性の実例を紹介します。
腹痛・下痢・血便が続くとき、何を疑うべきかを専門医の視点でわかりやすく解説します。
池袋上田胃腸クリニックではWEB予約・電話予約を受け付けています。同様の症状でお悩みの方はぜひご相談ください。
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症例|50代女性「急性胃腸炎と診断されたが治らない」
【症状】
夕食後しばらくしてから、冷や汗が出るほどの強い下腹部痛と嘔吐が出現。
しばらくすると血便を伴う下痢が始まり、心配になって救急病院を受診されました。
【前医での診断】
救急病院では血液検査とCT検査を行い、「食あたりによる急性胃腸炎」との診断を受けました。
整腸剤と痛み止めを処方されましたが、腹痛は改善せず、下痢・血便も持続。
翌朝、当院を受診されました。
【診察・検査】
来院時も下腹部に強い痛みと血便があり、脱水傾向を認めました。
腹部エコーを行うと下行結腸~S状結腸にかけて広範囲の炎症像を認め、症状と合わせて虚血性腸炎と診断しました。
■実際の腹部エコー画像■

エコーでは虚血性腸炎に特徴的な下行結腸に広範な壁肥厚を認め(矢印部分)ました。
【虚血性腸炎とは?】
虚血性腸炎とは、腸の血流が一時的に悪くなり、腸の粘膜に炎症や出血を起こす病気です【文献1】。
比較的高齢の女性に多く、動脈硬化や便秘による腸管の圧迫、脱水などが原因で発症します。
主な症状は以下の通りです。
| 主な症状 | 特徴 |
|---|---|
| 強い腹痛 | 特に左下腹部に多い |
| 下痢・血便 | 数時間後に出現する |
| 吐き気・嘔吐 | 腸管の動き低下による |
| 発熱 | 炎症反応によることもある |
【治療】
虚血性腸炎の多くは、安静・絶食・点滴治療で自然に回復します。
重症例では入院や外科的治療が必要な場合もあります。
当院では、
・自宅安静
・痛みや下痢などの症状を抑える漢方や整腸剤などの内服薬
・食事療法(絶食からはじめ、症状の改善をみながら食事形態を上げていきます。)
を行い、数日で症状は改善しました。
【経過】
後日、虚血性腸炎の原因となる病変(大腸ガンなどによる通過障害など)を調べるため大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。
結果は虚血性腸炎はほぼ治りかけで、ガンなどの病変もなく無事に診療終了となりました。

大腸内視鏡では虚血性腸炎に特徴的な片側性に発赤と引き連れを認めました(矢印部分) ほぼ治りかけの状態で、またガンなどの悪性所見もないため、診療は終了となりました。
院長からのコメント
虚血性腸炎と同様の腹痛や下痢・嘔吐といった症状は食あたりなどによる急性胃腸炎(感染性腸炎)や炎症性腸疾患などでも起こることがあり、またCTでは鑑別しにくいこともあり、しばしば誤診されてしまうことがあります。
適切に腹部エコーを行うことで正しい診断がつくことも多く、胃腸炎と診断されても症状が治らない場合や血便を伴う腹痛や下痢が続く場合は、専門外来で改めて検査を行う必要があります。
池袋上田胃腸クリニックではエコーや内視鏡を用いて迅速に診断を行っています。
症状でお困りの方は是非ご相談ください。
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
まとめ
-
急性胃腸炎と診断されても治らない場合、虚血性腸炎の可能性あり
-
冷や汗が出るような腹痛+血便は要注意
-
エコー検査で早期診断が可能
-
回復した後も、基礎疾患の有無を大腸カメラで確認することが重要
当院の大腸カメラの特徴
-
鎮静剤や独自の低痛挿入法による苦しくない内視鏡検査
-
高解像度スコープで小さな病変も発見
- 土日対応、事前診察は原則不要
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よくある質問(FAQ)
Q1. 虚血性腸炎は再発しますか?
A. 再発率は10〜15%程度とされ、便秘や脱水を避けることで予防できます【文献2】。
Q2. 感染性腸炎との違いは?
A. 虚血性腸炎は突然の腹痛と下痢・血便が特徴で、発熱や感染源がないのが典型です。
Q3. 内視鏡検査は必要ですか?
A. 重症度や基礎疾患の有無を確認するため、炎症が落ち着いた時期に大腸カメラを行うことがあります。
Q4. 薬で治りますか?
A. 軽症例では安静と内服治療・食事療法のみで回復することが多いです。
Q5. どのくらいで治りますか?
A. 軽症例は数日〜1週間で改善しますが、重症例では入院加療が必要な場合もあります。
医師紹介
東海林英典(しょうじ ひでのり)院長
📍経歴
国立東北大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、日本屈指の胃腸・内視鏡専門病院の平塚胃腸病院にて消化器・胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。
胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間3000件弱の内視鏡検査、および在院中は早期がんの治療も含めのべ数千件の内視鏡手術を施行。
令和6年10月より上田胃腸クリニックの院長に就任。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
「症状がつらい、病気が怖い…」そんな患者さんの気持ちに寄り添い、ご不安がある方でも、「ここを受診してよかった」と思っていただけるような診療を大切にしています。胃や腸のことで不安がある方は、お気軽にご相談ください。
アクセス
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東京都豊島区池袋2丁目66-10
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参考文献
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長谷川慎一ほか. 虚血性腸炎の診断と治療. 日本消化器病学会雑誌. 2019;116(2):107–115.
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Brandt LJ, Boley SJ. Colonic ischemia. N Engl J Med. 2000;342:168–178.
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日本消化器病学会. 虚血性腸炎ガイドライン2021.
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文責:東海林英典院長・神谷雄介理事長(消化器内科・内視鏡専門医)
